夜明けまえ、山の影で エベレストに挑んだシスターフッドの物語

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夜明けまえ、山の影で エベレストに挑んだシスターフッドの物語

  • ISBN:9784575317640

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内容説明

2016年、エベレスト。最も暗い夜明けまえ。性暴力の記憶の影を振り払い人生を取り戻すため、女たちはこの山を歩いた。
過去から、未来から、女たちの声が響き合う。連帯と共助の登山記。


「シルヴィアは戦士だ。その力強く温かい声は、彼女がいかに人生における最悪の瞬間から立ち上がり、誰かの標になろうとしてきたかを物語る。この本は弱さ、共感、無私の心がもつ力の証明だ。ここに描かれた、彼女が手にした強さと勇気に敬意を覚える」
――セレーナ・ゴメス(俳優、本書原作映画主演)

幼少期の性的虐待や父による支配が少女に落とした影。
それはやがて、さらなる苦悩と喪失を連れてきた。
人生を取り戻すために登山家となった彼女が挑んだのは、同じ性暴力サバイバーの女性たちとエベレストを歩く旅。互いの心の傷を差し出しあい、守りあうことで得た力を手に、彼女はそのままひとり、この母なる山の頂上へと向かう。凍てつく吹雪、世界の果てまではびこる男性至上主義、そして幾たびも訪れる死線。その先に見た光景とは――。
オープンリー・レズビアン初の七大陸最高峰登頂者が実体験と半生を綴った、心震わせる極限のシスターフッドの記。
Silvia Vasquez-Lavado “In the Shadow of the Mountain”の完訳。


装丁:名久井直子
装画:朝野ペコ

[本書について]
著者シルヴィア・ヴァスケス=ラヴァドはペルー生まれの登山家。2018年にオープンリー・レズビアン(レズビアンであることを公にしている人)として初の世界七大陸最高峰登頂を成し遂げています。
彼女は幼いころ近親者に継続的な性的虐待を受け、また権力志向の強く厳格な父親の支配する家父長制的な家庭環境に苦しんだトラウマから逃れるためアメリカにわたり、自分の心の傷を誰にも話せないまま過度の飲酒、ワーカホリック、野放図なセックス、無謀な行動などによってしか充実感を得られない20代を過ごしました。
やがて、アルコール依存症の自覚をきっかけに己のトラウマと向き合ううち登山と出会い、救いを求めるように世界の名だたる高山を登り始めます。その途上で他者と向き合うことを少しずつ覚え、自分と同じように性暴力を受けた経験のある若い女性たちが山や自然へと向かい、人生を取り戻すきっかけを作るための「カレイジャス・ガールズ(勇敢な女の子たち)」というNPOを立ち上げました。

そして2016年、エベレスト登山史に残る大規模雪崩の翌年に彼女が挑んだのは、同じ性暴力サバイバーの女性たちとエベレストを歩き、そのまま自身は初めての登頂に向かうという挑戦でした。悪質な人身売買の横行するネパールや自身の暮らすアメリカで性暴力を受けた経験のある、そして登山は完全に素人である5人の女性とともに、己の限界――そして「お前たちはしょせん無力な、奪われるだけの存在なのだ」と事あるごとに語りかけてくる過去の影を乗り越えること。
果たして自分は皆に光を示し、そして自分自身に巣くった心の影を振り払えるか。「世界の母神」と呼ばれるエベレストにそれを問いかけながら歩いた二か月間の思いを綴りつつ、著者自身の人生を振り返ったのが本書「In the Shadow of the Mountain(原題)」です。エベレストに挑む現在と、その人生に影を落とす過去が一章ごとに交互に描かれる構成となっています。
同じくラテン系の世界的なセレブリティ俳優であるセレーナ・ゴメスが彼女の人生に激しく共感し、自身のプロデュースと主演で映画化が決定。当初予定よりは遅れつつも、2023年には制作が開始される予定です。

「山」と「女」という、古くから男性の世界が「征服」の対象とみなしてきたふたつの存在。その魂と交信しながら自分の姿を探した一人の女性の独白が、読むものを力ではなく、共助の意思でエンパワーする回想録です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

星落秋風五丈原

26
悩み苦しみは吐き出すことですっきりするが、性被害はたいがい家族に信じてもらえない。著者の場合も同様だった。苦しみから抜け出す方法として著者が選んだのは、同じ性暴力サバイバーの女性たちとエベレストを歩く旅だった。エベレストは別名チョモランマとも言う。チョモランマは母の意だ。実際の母親には抱きしめてもらえなかった女性達は、物言わぬ母に抱きしめてもらうことを願ったのだろうか。いや、抱擁というより、登頂記を読むと、やはり挑戦の意味合いが強い。自身の精神を到底適いそうにない存在にぶつけにいった印象を持った。2023/01/04

くさてる

25
自分は登山の経験も無いし、興味もあまりないのだけど、極限状態に陥った人々の心理や冒険に向かう行動などには関心があって、時々登山の本を手に取る。この本も副題だけ見て読んだのだけど、登山を通して、これまで生きてきた糧を振り返る著者の肉声を感じる文章に圧倒された。癒しと復活、心の傷と生きることを考えた。わずかですが、日本の女性登山家について触れる箇所もあります。ただし、性虐待の描写があるので駄目な人は注意を。2023/04/19

よしじ乃輔

10
女性チームの登山記録と思い読み出しましたが、人身売買や幼少期の性的虐待などを乗り越える為にエベレストトレッキングに挑む旅。そして、著者はその後頂上を目指してゆきます。死線をくぐりながらの登山記録と著者の半生を綴った手記。母という意味を持つ山で心が解ける場面が過去をも含めこれからの人生を歩む姿を彷彿とさせてくれました。2024/02/01

ぱせり

8
なぜ被害者が罪の意識に苦しまなければならないのか。告発の声をあげようとするだけで脅されなければならないのか。家族がなぜ恥を感じてしまうのか。山の影の大きな暗がりは、身を隠す場所というより、自分を解放するようにと手招きをしている場所だった事、影はこちらを覆い隠すものではなく、仲間であり、わが家である事に気づく。2023/03/06

むさみか

6
いやぁ 山の話も人生の話も ものすごい迫力 しびれるような本でした 人によって 琴線に触れる部分は 違っても 困難を乗り越え 内なる自分 自信を取り戻していく勇気 彼女はまさに ヒーローでしたね エベレストは想像以上に厳しく 登山のパートだけでも 手に汗握りまくり 心臓が痛かったです 2023/01/31

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