内容説明
鶴見俊輔の原点にして主著ともいえる前期-中期の名アンソロジー、初めての文庫化。鶴見自身が自身の全作品のなかで最も気に入っていたという論考「かるた」を収録。解説:黒川創
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
amanon
9
これが五十年以上前に出たものだという事実に、複雑な感慨を覚える。一見、前時代的で、今では悪き意味でのリベラル左派のレッテルを貼り付けられかねない言述も散見されるが、同時にこれが半世紀以上も前に書かれたものかと驚きを禁じ得ない鋭い知見も少なからず見受けられるのだから侮れない。個人的には哲学の専門用語について画期的とも言える提言をした「哲学の言葉」がとりわけ興味深かったか。哲学の専門用語を巡る状況が、この当時から一歩も進歩していないという事実に嘆息。また、「ヴァイキングの歴史」は続編を書いて欲しかったか。2023/03/18
peco
1
鶴見俊輔が20代から40代という働き盛りに書いた論考集。多くの新しい気づきを得た。新渡戸的折衷主義。賞味期限はとうに過ぎているのに日本の政治、官僚体制は未だ新たなフレームワークを見出すことができておらず政策の混乱ぶりの一端を見る。三部においては逃れたくても逃れることのできなかった知識人の消極的待避。苦渋の思いが滲んでいる。時代や軍部よりも己れ自身に対して。その正直さが戦後の行動に繋がっていくのだろう。そして我々も「自己を含まない集合」として論を張ることがいかに無責任なことか自覚し続けねばならない。2023/10/20