内容説明
とにかく、作者が楽しそうであり、俳句を通じて人生を面白そうに眺めている――岸本尚毅
秋や手に文鳥の来てすこしにぎる
第八回石田波郷新人賞受賞の著者、待望の第一句集。
二〇一四年から二〇二二年までの二五六句を収録。
〈収録句より〉
セーターにあやしき柄のありにけり
妹の駒はみづいろ絵双六
夕東風へ黒板消しを打ち合はす
紫陽花や銀の器に歯の軽さ
うつむきて夏着の縞を数へゐし
船遊び手を振れば手は風を受く
やすめればからだよくなる九月かな
宴とほく月の廊下にすれ違ふ
紐引いて橇の散歩は木の間ゆく
この宿のシャンプーよろし雪あかるし
目次
着ぶくれ
手にミモザ
あやふやに
月の廊下
いつか行く
解説 岸本尚毅
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てん子(^_-)
9
俳句は短歌以上に、わからなさがつきまとう。その句が好きかそうでもないか、でしかない、もしくは自分の気持に当てはまるか、かな。好きな句は、「セーターにあやしき柄のありにけり」「包まるるティッシュに透けて金魚の死」「駅のホームで桃をジュースにしてもらう」「好きらしく栗飯の栗先に食ふ」「目がふたつマスクの上にありにけり」(この句は季語は冬?)2024/07/24
Cell 44
3
かなり良かった。おすすめです。2023/07/10
空の落下地点。
2
水とみづを、見ずと掛けているのかなぁ。家庭と酒場という場所の対比。東風と黒板消しのハイタッチ、手が風受くなど、俳句でお馴染みの風の物体化。背を打てば音、これは老いて背骨がむき出しになっているのを想わせる。~だよ、という呼びかけは現代俳句ならでは。雪中→玄関と視界が狭まることのさみしさ。春休み、働く郵便屋さんという静と動の対比。自由な風船が犬という従属の象徴に変身、大人になる虚しさを表現か。歩く、という行為に伴う鼓動がこの句集の最初から終わりまでずっとある。作者の鼓動が伝染するライヴ感のある俳句集でした。2024/02/21
トントン
1
斉藤志歩の第一句集。 都会的かつ日常的な気付きを詠んでいる句が多い、という印象を受けた。 一般的には「俳句」というと小難しい印象を持たれがちではあるが、この句集は非常に親しみやすい。というのも、テーマや言葉遣いが身近なものばかりだからだ。 具体的な例としては、「ライブハウスの階段地下へ夏の夜へ」が挙げられる。季語は「夏の夜」。まず「ライブハウスの階段地下へ」で、なんとなくの共感というか、「あるある!」という気持ちになる。その後の「夏の夜へ」は、ライブの盛り上がりやウキウキする気持ちを示唆していると読んだ。2025/05/02