内容説明
西の丸公爵の娘・氷見子は、父の秘密の記録係として客人の会話を筆記している。陸軍大臣との密談から、青年将校たちの蹶起計画を知った氷見子は……。公爵の息子でありながら蹶起に加わろうとする陸軍士官の兄、自ら悲劇の道へと身を投じる陸軍大臣の娘。二・二六事件前夜の貴族と軍人の暗闘を、不羈奔放な氷見子の目を通して描く。〈解説〉奥泉 光
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
16
氷見子は勿論凄いのだし、語り手としてこの上なく賢くて目敏くて、自然物と通ずる身体的な感性も含めて魅力的な人物ではあるのだけれども、凄さで言えば大山のおかみさんの方が上であろうと思う。この小説が如何なる小説であるかを体現する存在としての大山のおかみさん。 悲劇をより血腥く、より報われない、完膚なきまでに悲劇である方へ。この小説を、或いはやがて迎える終章の悲劇性を傑出したものへと高めているのは、大山のおかみさんのその濁った白眼と、誰にも妨げられることなく通ってしまうその明快な言葉なのかもしれない、とさえ思う。2022/12/05
miaou_u
11
三島由紀夫が2.26事件を背景に描いた『英霊の聲』という短編小説がありますが、それはそれとして、また違う世界観ではあります。が。今、もし三島が文学としての、2.26事件を描いたら、、、というような印象を受けました。少女性や女性性だとか男性像だとか滅びの美学的なところだとか、、三島チックだなぁ。。と、ひとたび思ってしまうと、いまいち入り込めなかったのです。。。2023/03/09
歩月るな
6
『鷺と雪』『蒲生邸事件』などに連なる二・二六事件エンタメ小説。三島の『憂国』より二年早い59年の作品。何かでお貴族の子女たちの百合小説と聞いて読んだから、登場人物の最小にして巧緻な描写のグロテスクさに息をのむ。小道具として出てきた「薬」は使われなければならない必然の生み出した破局、お見事としか言いようがない。「精力のありあまった男たちにとって、蹶起するのは、射精するのと同じことだ。~どんな男だって、瞬間的な恍惚のあと、だらだらと続く精虫の運命のめんどうを見てやるのは、めんどうくさいのだ。」この書きぶりよ。2026/06/08
まひろん
2
節子の人生が哀れ。父親は偉そうなだけで何一つわかってなさそうだし、その父親の生きざまを考えると女に生まれていいことない人生だなと思わずにはいられない。主人公の氷見子にしても、自分の考えで生きているようでいて父親や兄に振り回されているだけのよう。大した男じゃないのに、兄も父も。2026/03/08
バーベナ
2
2.26事件の背景となる貴族軍人たち。公爵の娘:氷見子はよなよな父と来客の会話を書き留める。氷見子のちゃっかりした性格が心強い。ラストは悲劇的なだけに、彼女のその後が知りたくなる。2023/03/27
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