内容説明
1900年、放射線の不可思議な現象を説明するため、M・プランクは「量子」という概念を考案した。その後、天才たちはこれを武器にニュートン力学を覆して、新しい世界像を提示し続ける。量子力学の解釈をめぐるアインシュタインとボーアの論争を軸に、ハイゼンベルク、ド・ブロイ、シュレーディンガーなどの人間ドラマも交え、物理学百年の流れを追った白熱の科学ノンフィクション。(解説・竹内薫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
149
壮大な歴史ドラマの様。知の巨人たちががっぷり四つに組んでの大バトル。物理の教科書に載っている法則の名前など、よく見る人物が生きいきと描写される。教科書には普通、結論しか書かれないから、背後にどれだけの苦悩と努力があったのか読み取るのは難しい。物理教科書の法則は、それぞれに死ぬような苦しみと試練を乗り越えて残ってきたのだった。知的冒険の良書。2022/12/26
gonta19
116
2017/1/28 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。 2019/6/27〜7/9 大学時代、物理学を志し、自分の才能の無さに挫折して化学・生物学に日和った身ではあるが、19世紀末から20世紀初頭にかけての、物理学の巨人たちが活躍する量子力学の完成に到るまでは、1番心がわくわくするところであった。これまでも何冊かこういう本は読んで来たが、ここまで包括的かつ、内部に踏み込んだ本を私は知らない。名著である。2019/07/09
夜間飛行
89
プランクによるエネルギーの刻み目=量子の発見を知ったアインシュタインは、光を波とする通念を棄て光量子を想定する。一方、量子論を用いて電子の軌道を説明したボーアは光の波動説を支持。やがてX線の反射が運動法則に従うことが発見され、電子までが粒子かつ波であることが実証される。粒子と波の対立は、ハイゼンベルクの行列力学とシュレーディンガーの波動力学の対立にまで引き継がれる。そこから決定論に対する確率論の挑戦という興味深い展開となり、不確定性原理が現れる。難しい量子論の歴史を壮大な劇を見るように愉しませてくれる本。2017/09/18
ステビア
36
超一級のノンフィクション。微視的世界は複雑怪奇。2023/08/30
かんやん
32
1900年、プランクが放射線のエネルギーを量子という単位で計算したのが、量子力学の始まり。一方、アインシュタインは光の粒子的振る舞い、つまり光量子(光子)を見出す。ボーアによる電子のエネルギーの量子化、ハイゼンベルグの行列力学と不確定性原理、シュレーディンガーの波動力学等、天才物理学者の繰り広げる思索とドラマ。ついてゆくだけで精一杯だ。次々と思考実験を行い量子力学を批判するアインシュタインと、なんだかんだと解決策を絞り出すボーアの知恵比べ。自分のような凡人はもはや笑うしかない。そして死後も論争は続く。2018/02/20