内容説明
突然の火事に遭い、孤独になったコテツは、島根に住む遠縁のかがりに引き取られる。かがりは、日本で唯一といえる女性刀鍛冶だった――。 かがりやその弟子たち、そして伝統工芸と呼ばれる作刀の仕事にかかわるうちに、徐々に刀に興味を持つコテツ。悩みながらも、鉄を打ち、その熱に溶かされ、コテツは自らの心の形も変えていく――。 気鋭の作家が少年の成長を瑞々しく綴った、胸に焔が灯るような青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シャコタンブルー
72
高校生のコテツは火事で顔の左半分に大火傷を負い、火に対するトラウマを抱えている。そんな状態でありながら火を扱う刀匠の見習いになっていく様相が描かれている。トンテンカン。トンテンカン。刀匠がリズミカルに鎚を振り下ろす音が響き渡る。単調に思える作業だが毎日同じリズム同じ力で鉄を打つことの難しさ、厳しさは熟練の為せる技だ。以前本物の刀を握らせてもらった時に、背筋が凍るような感覚と凛とした緊迫感を体感した事を思い出した。現在に刀を造る意義、刀の存在する意味、それを模索し挫折しながらも成長していく姿が清々しい。2022/12/16
えんちゃん
67
図書館新刊タイトル惚れ。火事で顔に傷を負った父子家庭の男子高校生。父は意識不明の重体。島根にある遠縁の女性刀鍛冶職人の元で自分を取り戻してゆく成長物語。気の遠くなるような刀の鍛錬工程と、揺れ悩む若者たちの姿が重なる。この地方の『行って帰っておいで』という挨拶がなんともすてきだ。怖がらなくていい。帰る場所があるから。勇気をだして一歩を踏み出そう。全ての悩める人へ。2023/01/12
よっち
38
突然火事に遭い火傷を負った東京の男子高校生コテツ。父も植物人間状態に陥り天涯孤独となった彼は、遠縁の島根に住む女性の刀鍛冶・剱田かがりという老婦に引き取られる青春小説。自暴自棄にな気持ちで島根にやってきたものの、クラスメイトの視線に耐えられず学校に行けなくなってしまうコテツ。そこから少しずつ弟子たちと刀剣の仕事を手伝う展開で、現代で刀を作る意義や弟子たちとの関わりで葛藤を抱きながらも鉄を打ち、熱に溶かされて変わってゆく心境があって、心の傷が癒やされて様々なことに向き合い受け入れてゆくその姿が印象的でした。2022/11/29
おかだ
33
開幕直後に主人公が火災に見舞われ、あれよあれよという間に刀鍛冶の世界と出会う。火でえらい目に遭ったのに鍛造とか大丈夫なのか?と思ったけど、荒療治的な感覚だろうか。作中問われる、今の時代に刀は必要か、人を殺せる道具を作る意味とは?…考えながら読んだけど、自分の中で答えは出ない。でも、色んな人の迷いや想い、脈々と受け継がれた願いが込められ鍛錬された刀に、意味がないとは思えない。丹精込めて打たれた刀は、さぞかし美しいだろう…と想像してゾクゾクした。前を向いて歩き出すためのグッとくる言葉がいくつもあった。2023/07/14
信兵衛
29
ちょっと変わり種の青春成長ストーリィ。 孤独な高校生が刀鍛冶場で働くことにどういう意味があったのかは、読んでのお楽しみです。2022/12/28
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