内容説明
「近ごろ数学がいろいろの所に顔を出すようになって、数学ぎらいの人々を困らせたり、うんざりさせているようだ。この本はそういう人々のために書いたいくつかの文章を集めたものである。どの文章も数学とはそれほど恐いものでも、また人間ばなれしたものでもなく、ただの人間たちが、何千年も昔から、寄ってたかってつくりあげた、きわめて人間くさい学問なのだ、という立場から書かれている。」(あとがきより)
数学の歴史や、数学のなかのいくつかの典型的な概念について、また、子どもも親もセンセイも悩ませる「集合」についてなど、平易でありながら本質的な数学論が語られる一冊。
『数学は変貌する』を改題、「数学と人間」「現代社会と数学の役割」「文科のための数学」の三篇を増補し、〈弔辞〉大岡信、〈追悼エッセイ〉森毅「異説遠山啓伝」を収録。
【目次より】
プロローグ 数学とはなにか
数学は変貌する――古代から現代まで
古代の数学
中世の数学
近代の数学
現代の数学
連続と不連続
数学の方法
分析―総合の方法
等質化の方法
操作的方法
「集合」おそるるにたらず
数学と人間
現代社会と数学の役割
文科のための数学
あとがき
弔辞(大岡信)
異説遠山啓伝(森毅)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
123
昨年末に文庫化された本だが、久し振りに遠山先生の世界観を満喫した。「数学は若干の公理系から導き出される自律的な体系」という考えに反対し、「数学は自然や社会を反映する客観的な知識」を前提とした先生の数学教育論がある。本書では、古代・中世・近代と数学の歴史を辿りながら、現代数学への道のりを分かりやすく解説。随所にブルバキの影響を感じるが、それが執筆時(1950年代)の時代の雰囲気なんだろう。生活単元学習や、数学は実務の侍女という考えを否定し、「数学によって望ましい人間形成を」という先生の情熱が迫ってくる。2023/02/03
KAZOO
104
数学に関する遠山啓先生のエッセイ集です。あまり数式なども出てこないで様々な観点から数学にかかわる分野について語ってくれています。文科系の人でも無理なく読めます。私は数十年前に岩波新書の「数学入門」を読んだことがありかなり参考になったことを思い出しました。この本には遠山先生への弔詩を大岡信さんが書かれ森毅さんが遠山啓伝を書かれていてどちらかというとラディカルな人であったことがわかりました。2023/12/10
ひやしなむる
6
“古代は経験的である。そして帰納的である。中世は演繹的である。しかしそれは動的でなくて静的である。近代は動的である。現代はいまいったように構成的である。また構造をつくり出す、こういうふうになってきているといってよろしい。”(p137-138) 面白くってもりもり読んだ。しかし、真ん中の「連続と不連続」と「数学の方法」がちょっと難しくて失速……しばらく積んでしまった。また読み返したい。”微分は無限に細分すること(分析)であり、積分はいったん細分化したものをつなぎ合わせること(総合)である。”(p271)2023/05/08
クレストン
6
数学教育でしられる方による、様々な文章を一冊にまとめた本。おおもとの本は「数学は変貌する」(ちくま学芸文庫でも一部分が文庫化されている)。内容の半分は数学史を概説する内容で、後半が様々な数学的観点解説やエッセイとなる。後半部分は同じような論旨が何回か繰り替えされているように思った。その点から、この本は著者をよく知る人に向けた編集でいわば少しマニアック向けな本かもしれない。2023/02/02
かつたま
4
数学とは計算することだけでないことには気づいていたけど、そこから学校の勉強はどんどん理解できなくなってきて、高校の数学の先生は高校数学に無かったマクローリン展開(テイラー展開)をいきなり授業やりだしたりして一気に数学と距離を置きだした。なんの必要があってなんの役に立つのか説明があれば楽しめたのかもナとこの本を読んで思い出しました。私の解いていく楽しさは先生のおっしゃる近代数学までなのだな、と理解できたのも読んでよかったところ。2023/04/12




