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内容説明
漱石はどんな乗り物で旅をしたのか?新婚旅行の汽車、イギリスに渡る船、満州の特別列車……、近代交通史を漱石の旅路から追う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
102
歩くか乗馬するかしかなかった江戸に比べ、国民が最も欧米科学の発展を肌で感じた近代交通システム興隆期に漱石は生きた。鉄道や蒸気船、人力車に自転車など新しい移動手段を積極的に使い、各地を旅しては経験を作品に落とし込む姿は実に好奇心旺盛で楽しげだ。鉄道史の専門家である著者だけに、文学研究者ならば目を付けない「交通」という補助線から漱石の小説や日記を分析し、作品の小道具に使ったのを明らかにする。遺稿で第一次大戦の飛行船による爆撃を論じるなど交通に深い関心を寄せていた漱石が、現代の交通事情を目撃すればどう思ったか。2023/02/25
MASA123
9
漱石が体験した交通手段から、作者独自の漱石論に発展させている。自分は「漱石日記」を全文読んだので、本書のように英国留学の交通部分だけを断片的にとりだすだけでは、漱石日記は正しく解釈できないと思った。 客観的な事実として、明治時代の交通事情を知るには、とても興味深くおもしろい。漱石の文学論の部分は、交通にすべて関連づけているので、ちょっと無理があるのでは(強引というか)。 中学校の英語教師経験は、松山の次に、熊本があるのは知らなかった。熊本赴任時に結婚し、九州に新婚旅行に行っているのです。2023/06/10
田中峰和
7
漱石が生きた時代は、鉄道の開通や蒸気船の就航など人々の移動が西洋の影響で大きく躍進した。漱石も様々な交通手段を利用し、作品の中でもその様子を記述している。学生旅行には開通したての鉄道に乗り、ロンドン留学へは船で向かった。留学先で鬱々としていた漱石に気晴らしさせるため、友人が自転車の練習をさせた。当時の小説によく描かれる人力車は、駕籠かきの仕事を奪ったが、転職先として車夫の職を与えた。元々理系が得意な漱石が文学者となり、やがて売れっ子の作家になっていく。その生涯を交通手段を使いながら紹介される。2023/07/18
てくてく
5
タイトル通り、漱石の旅と当時の交通手段などを関連させたある種の漱石論。文体に慣れるまで少してこずったが、日本、イギリス、満州などの鉄道状況などの蘊蓄、それと漱石の日記や小説を重ね合わせた考察が面白かった。2023/10/18
志村真幸
2
著者は鉄道、文豪、漱石といったテーマの著作が多い人物。 本書は、夏目漱石の人生をたどりつつ、彼が旅した交通手段に注目した内容だ。東大の学生時代は日本鉄道がどんどん敷設されている時代であり、さかんに利用してあちこち出かけている。 そしてイギリス留学については、船旅と、ロンドンでの馬車や地下鉄。 さらに満鉄の総裁と親しかったことから、中国大陸で豪華な旅をしたこと。 人力車、自転車、飛行機についてもふれられている。 テーマとしては楽しいが、いろいろ紹介しただけに留まっているのが物足りない。2023/04/01