内容説明
沖縄、薩摩半島、そして屋久島へ。海の民が伝えた屋久島古謡“まつばんだ”の謎を追うノンフィクション大作!
かつて屋久島で歌われていた「まつばんだ」は、琉球音階が取り入れられた民謡です。ただ、屋久島は沖縄や奄美からはるか北方にあり、琉球文化圏ではありません。なぜ屋久島に琉球の名残があるのか、ごくわずかな例を除いて本格的な調査が行われてきませんでした。それならば、と3年がかりでフィールドワークを敢行。そこから見えてきたのは、沖縄~鹿児島~南西諸島に暮らす海洋民たちの生活史でした。同時に、この民謡を復活させようとする島民たちの活動も追っています。本書は、そんな旅や歴史民俗の要素を含んだノンフィクション書籍です。
【著者】
大石始
1975年、東京都出身。世界の音楽・地域文化を追いかける文筆家。旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」主宰。著書・編著書に『盆踊りの戦後史』『奥東京人に会いに行く』『ニッポンのマツリズム』『ニッポン大音頭時代』『大韓ロック探訪記』など。
目次
目次
●序章 異郷の記憶が刻み込まれた歌
●第1章 歌であって、歌以上のなにか――真冬の屋久島へ
●第2章 歌に残るマージナルマンたちの痕跡
●第4章 海の暮らし――屋久島の海民たち
●第5章 山から伸びる「歌の道」
●第6章 明治生まれの歌い手たちの記憶
●第7章 3度目の屋久島――2021年5月
●最終章 島から島へ
●あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
76
屋久島の幻の古歌「まつばんだ」を巡る旅の記録。まるで祖先が辿ってきた道筋を語り継いできた歌の道(ソングライン)を遡るよう。東京在住の著者が屋久島で取材をする過程でわかってくる屋久島の歴史や風俗を追体験する様にわくわくしながら読み終えた。土地を訪れ、山の島である屋久島の独特な文化も、現在のような鹿児島の影響よりもより、南の琉球の影響の方が強かったのだろう。昨日訪れた花之江河も、集落と前岳と奥岳の関係も、畏怖を込めた存在である事を改めて思う。「屋久のお岳をおろかにゃ思うなよ 金のな 蔵よりなお宝な」歌の冒頭。2024/04/29
So Honda
2
鹿児島ー屋久島ー琉球をむすぶひとつのうた。プライベートな空間で歌い継がれ、そしていったん途絶えてしまったうたのルーツをさぐるルポはとても心躍る。屋久島には1994年と96年の2回訪れたが、山と海が直結する独特の地理とそこで育まれた風土が印象的だった。また訪れたくなった。素敵な装丁に版元をみると屋久島の出版社だった。これもよい2023/01/30
Natsuhiko Shimanouchi
2
「まつばんだ」という忘れかけられた唄を追うロマンの旅の追体験。偶然の出会いを含め何よりそのプロセスが大事だし楽しいんだろうなと思う。屋久島も行ってみたいし大石君と焼酎飲みながら話聞きたい!2023/01/11
河村祐介
2
年末に読んだ 『「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係』とつながった感じが個人的にはあって、くだんの本では日本列島の地質的な組成が食文化を形作ったという本なのだけど、この本で展開される、「航路」や「漁」、そして「交易」によって伝えられた、作られ「音楽」のルーツをたどっていく感覚に、やはりどうしてもそんな人々の行き来を決定した、島(屋久島、そして南西諸島)や海流があってという地球規模の地質学的な組成にもなんとなく思いをはせてしまったというか。2023/01/06
石原琢也
1
石垣島の本屋で購入。屋久島に伝わる"まつばんだ"がとりなす土地やファミリーヒストリーを紐解く。琉球音階の極限云々の話は奄美大島の博物館で知ったような。2025/09/20
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