犬に話しかけてはいけない - 内陸アラスカのマルチスピーシーズ民族誌

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犬に話しかけてはいけない - 内陸アラスカのマルチスピーシーズ民族誌

  • 著者名:近藤祉秋【著】
  • 価格 ¥2,640(本体¥2,400)
  • 慶應義塾大学出版会(2022/11発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
  • ポイント 720pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784766428452

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内容説明

カリブー、ワタリガラス、クマ、ビーバー、ギンザケ、オーロラ ……

多種とともに生きのびる知恵を知る
人類学の冒険がはじまる
内陸アラスカではかつて「犬に話しかけてはいけない」という禁忌があった――。

本書は、マルチスピーシーズ民族誌と環境人文学の視点から、フィールドワークを通してアラスカ先住民の人々と「自然環境」との関わりを描く。
内陸アラスカ先住民の人々は、動植物や精霊、土地との関係性のなかで息をひそめながら暮らしてきた。「人間」が問い直されている今、彼らの「交感しすぎない」という知恵から「自然との共生」を再考する。

目次

はじめに――ある日の野帳から

第1章 マルチスピーシーズ民族誌へようこそ
 現代人類学への道
 マルチスピーシーズ民族誌の誕生
 人新世と環境人文学――マルチスピーシーズ民族誌との関連から

第2章 ニコライ村への道のり
 ニコライ村
 フィールドワークの始まり
 本書のおもな登場人物
 個人主義的な人々?
 徒弟的なフィールドワーク
 フィールドワークの身体性

第3章 ワタリガラスのいかもの食い──ある神話モチーフを考える
 トリックスターとしてのワタリガラス
 神話は子育てによく効く?
 犬の屠畜とワタリガラス神話
 犬屠畜モチーフが他地域からもたらされた可能性はあるか? 
 〈ワタリガラス〉の犬肉食は、動物行動学で説明できるか?
 〈ワタリガラス〉の犬肉嗜好モチーフは修辞戦略としてみなしうるか? 
 多種の因縁を語る神話

第4章 犬に話しかけてはいけない──禁忌から考える人間と動物の距離
 ある禁忌の語りから 
 運搬・護衛・狩猟
 犬ぞりの受容と二〇世紀初頭の変化 
 犬ぞりの現在 
 犬―人間のハビトゥス

第5章 ビーバーとともに川をつくる──「多種を真剣に受け取ること」を目指して
 ビーバー論争 
 生態学・生物学と対話するマルチスピーシーズ民族誌
 ビーバーとディチナニクの人々の関わり
 ビーバーダムとギンザケ
 ビーバー擁護派と反対派の二項対立を超えて
 キーストーン種とともに考える
 マルチスピーシーズ民族誌が目指すこと

第6章 「残り鳥」とともに生きる──ドムス・シェアリングとドメスティケーション
 ドメスティケーションの周辺から考える
 野鳥の餌づけ・保護・飼育
 「残り鳥」と住まう
 野鳥とのドムス・シェアリング
 ドムス・シェアリングとドメスティケーション

第7章 カリブーの毛には青い炎がある──デネの共異身体をめぐって
 北方アサバスカンの身体
 共異体と社会身体
 サイボーグ・インディアン
 カリブーの民とオーロラ
 巨大動物と超自我
 ぬくもりの共異身体

第8章 コウモリの身内──環境文学と人類学から「交感」を考える
 悪魔からロールモデルへ
 目的としての「交感」と実用的な「交感」
 生きものとの会話と非会話
 「交感しすぎない」という知恵 

おわりに――内陸アラスカ先住民の知恵とは何か?
 マルチスピーシーズ民族誌の射程
 各章の概要
 アラスカ先住民の知恵
 第三の道を探る

あとがき

初出一覧
図版一覧
動物の名称一覧  
参考文献一覧
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ポテンヒット

12
気になるタイトルとアラスカの話に惹かれて。文章がやや学術的ではあるが、アラスカ先住民の話はとても面白い。鮭の遡上とビーバーと人間の関わりや、渡り損ねた残り鳥を保護する話は、長年この地で生きる人々の知恵や周りの環境との程よい距離感が見てとれる。神話から現在まで連綿と続く彼らの生活は、工業化や大量生産で環境を激変させてきた私たちの生き方をシフトチェンジするヒントになるように思えた。2023/03/02

owlsoul

7
人新世の問題は、人間中心主義によっては解決しない。私たちは自然との間に断絶を感じ、その溝を埋めようと登山やキャンプに勤しむが、実際は世界から人間だけを取り出して考えることはできない。複雑に絡み合う生態系の中で、動植物とフラットな関係で世界を構築することは可能か。著者はアラスカ狩猟民の生活からそのヒントを導き出す。彼らが「犬に話しかけてはいけない」という禁忌を持つのは、人と犬との間に境界線を引くためだ。意識的に距離を取らなければならないほど、彼らと動物の実存的距離は近い。支配ではなく共存。人新世への処方箋。2024/10/30

たかぴ

4
マルチスピーシーズ民族誌の視点からアラスカの人々、そこでの体験を書いた本。過酷な環境、多種の中で生きざる負えないその煩わしさから生きる狡知として積極的に関わる事をしない、交感し過ぎ無い知恵を生み出したのか。2022/12/30

3
8章の議論が面白かった。多自然主義的な世界では種の間の垣根は低く、「交感」しすぎないことが肝要になる(=「犬に話しかけてはいけない」)。「ユカギールの世界においては、人間性は自明な所与のものではなく、常にぼやけ続けるうすい輪郭に沿って立ち現れる存在である。人間性は、不断の努力によって保たれなければならない危うい綱渡りの末に成り立つものである」(p176)。2024/06/15

中桐 伴行

2
初めて民族誌というものを読んだ。学術論文として読み始めてしまったため、記述論文なのか、分析をしたいのかどちらにもカテゴライズできず、初めて出てくる言葉やキーとなるであろう言葉の目次の項目がなく、説明もないことで面食らってしまった。友人より民族誌というジャンルはそういったものと違うことを教えてもらい、その後は「著者の分析や考えが入った二次資料」として興味深く読むことができた。ただ、最初は論文として読んでいたために論旨を汲み取ろうとしてしまっており、内容が頭に入っていない。週末までに再読が必要だ。2023/03/22

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