内容説明
「二キ三スケ」(東条英機、星野直樹、松岡洋右、岸信介、鮎川義介)だけで満洲は語れない。「一ヒコ一サク」(甘粕正彦、河本大作)が隠然たる影響力を行使する、
再チャレンジ、前歴ロンダリングも許される自由の天地。「五族協和」の理想を信じた人たちの生と死。
既存の満州国のイメージをくつがえす、満州へ渡った日本人の奇妙にして、真剣なる「昭和史」物語。
装幀画は安彦良和氏が担当した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ばんだねいっぺい
29
大枚はたいて虹色のトロツキーを買ったのは遠い昔。大著だから忘れてしまうが、残ったのは「高粱飯」という食を通じて「五族共和」の解れが見えるのが面白い。小林秀雄の目を借りたくなったし、甘粕大尉は、妖しからんし。石原莞爾は、ぬらりひょんだ。2023/08/07
Masakazu Fujino
14
わずか13年半しか存在しなかった「満洲国」をめぐるさまざまな人々の姿や行動をグランドホテル形式で36回に分けて取り上げた本。「満洲国」は「二キ三スケ」(東條英機、星野直樹、松岡洋右、岸信介、鮎川義介)だけでは語れない。原節子、笠智衆、木暮実千代、小林秀雄、島木健作、石橋湛山、小澤さくら、内田康哉、林銑十郎、植田謙吉、駒井徳三、板垣征四郎、小磯国昭、田村敏雄、十河信二、矢内原忠雄などなどなど、多彩な人物たちと、直接登場しないが、隠然たる影響力を行使した「一ヒコ一サク」(甘粕正彦、河本大作)の描くラビリンス。2022/08/19
冬薔薇
5
満州に関する膨大な資料、小説、評伝、自伝、民間人の記録、日記、寄稿、などをもとに多くの当事者たちの言動から「満州国」を描く。「人間というものも〜十善も十悪もない」「ねえ、われわれが満州でやってきたこと〜あれが侵略だったのかねえ」「それ故にそれ故にこそ、かつて軍や満鉄、「満洲国」や大新聞社の威を借りて、大陸で支配者としての栄耀栄華をきわめながら、戦敗れるや口をぬぐってたくみに身を処した人たちが許せない」。暇にまかせて巻末の人名を数えてみたら940数名、知ってる名前が二割強。混乱しつつもやっと読み終えた。2023/04/15
とりもり
3
大著。日本(関東軍)の傀儡国家だった満洲国にゆかりのある人物たちが次々と登場して、そのエピソードを通じて満洲国を活写していくスタイルは重複も多いがなかなか面白い。一番驚くのは、満洲国に何らかの形で関与した人たちが戦後の要職に就いているケースが非常に多いということ。これも一つの戦後が総括されていないことの証左なのかと。小澤征爾の名前が板垣征四郎と石原莞爾から1字ずつ採られているというのは初めて知った。大達茂雄の器の大きさが印象に残った。もう少し知りたい人物。★★★★☆2022/08/28
ゆずこまめ
2
実際にそういうホテルがあるのかと勘違いして読み始めた。満洲についてほとんど知らないので、色々な人物が出てきて大変面白かった。国の政策としてはともかく、それぞれの思いで新しい国に行って、新しい国で新しい組織や国や生活を作り上げるのが楽しかった人も結構いたのだろう。2025/02/03




