内容説明
西洋と東洋、どうしたら二つの文化の融合が可能かを考え続けてきた国・トルコ。トルコの考え方を通して、異文化理解やグローバルとはどういうことかを考える。
目次
◆はじめに/第1章 イスラムと政教分離のはざま/イスラムの国ではないトルコ/ケマル・アタテュルクの決断/イスラム主義の台頭/イスラム政党はどうやって民衆の心をつかんだのか/スカーフ着用の自由を!/イスラムと女性の自由/民主化のジレンマ/第2章 だれも正義の味方になれない民族の問題/トルコ人であること/憎しみは憎しみをよんで/報道される民族問題のかげに/ヨーロッパが残した傷痕/正義をふりかざす前に/第3章 素顔のトルコの人たち/子どもはたからもの/赤ん坊にとっての日本とトルコ/日本人への熱いまなざし/ヨーロッパ人のおしつけがましさ/悲劇が紡いだ日本との関係/バイラムおめでとう!/羊がやってきた/山盛りの肉がやってきた/第4章 激動する世界のなかで/トルコ人労働者の30年/家族とともに暮らすこと/統合か同化か/私はだれなの?/居場所を求めて/東西統一がもたらしたもの/日本のものさしを見直してみよう/日本の外国人労働者問題/第5章 トルコのものさしが示す世界の姿/ある希望への旅路の物語/フランスへ密航する/フランスでみつけたもの/新国際秩序のなかのイスラム/秩序をつくることより人間を知ること/◆おわりに/◆次に読んでほしい本
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
110
トルコは東洋と西洋の間に位置するだけでなく、宗教や民族も変遷があった地域でもある。そして現在ロシアとウクライナの隣国である。今後、日本は労働力が減少し確実に移民が増えてくる。その際日本のものさしだけで見ると異文化と共生することは難しい。トルコは1960年代ドイツに多くの移民を送り出し、2世3世の問題に直面した。最近では近隣のシリア、イラクから移民を受け入れる立場になった。オスマン・トルコ帝国では多くの民族が共存し、第一次世界大戦後イギリス、フランスに抵抗し独立した。トルコのものさしに学ぶ点は数多くある。2022/11/07
yumiha
42
たまたま『地べたから考える』(ブレイディみかこ)の隣にあったので薄い本(127ページ)だからすぐ読めるだろうと、ついでに(著者さん、すみませぬ)借りた。1994年の『トルコのものさし日本のものさし』をもとに、30年後の現状を付け加えたもの。西欧の価値観を歴史的にも地理的にも受け入れざるをえなかったトルコについて、いろいろ知ることができたし、オルハン・パムク作品を読む前に本書を読んでおけばよかったとも思わされた。クルド人問題にも詳しく、自主独立を認めたらエエやんと単純に思っていた私の浅はかさを教えられた。2025/02/08
紙狸
24
2022年10月刊行。1994年の原著に加筆。若者向けに書かれ、127頁という小冊子。しかし、中身は重い。トルコという対象に何十年も取り組んできた著者の言葉が重いのだ。トルコという国は、「西欧のものさし」と「東洋(イスラム)のものさし」を融合できるか考え続けてきた国だという。著者は、「融合は可能」だが、価値観の根底には「イスラムのものさし」が強く出てくるように思える、と述べる。トルコはよく「親日的」と表現されるが、著者によれば、日本との関係は「国家どうしというより、人と人との関係に支えられてきた」と言う。2022/11/27
穀潰し
5
イスラム教徒が多くいながら政教分離をとるトルコについて書いた本。グローバリゼーションが進む今日、異文化・異教徒との関わり方を考えるのに良い。日本の、「日本に労働者として来る際、単身赴任を求める」という姿勢が国際的に見て人権の尊重に欠けるというのは知らなかった。クルド人に関しては、「政府のクルド人に対する扱いに不満はあるもののゲリラに参加はしない」という、報道からは見えない立場のクルド人について考えずに議論を進めるのは危険とあり、共感した。2025/03/07
かりん
2
普段なら読まない分野の本。訳あってたまたま読んだ本なのだが面白かった。私も「イスラムと聞くと何となく避けたくなる」偏見だらけの人間だなあと反省しつつ、トルコの歴史的背景や個々の人間としてのトルコ人の話を興味深く読んだ。加筆された部分(ウクライナ侵攻などの現代の社会情勢も出てくる)はさらに勉強になった。私のものさしも西欧寄りであった。2023/04/30
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