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内容説明
ルポライターの野口三吉は、「原爆から八年後の広島」についての文学的報告を執筆するため、その地にやってきた。そこで彼が目にしたものは、原爆の後遺症とたたかいながら日々を送る人々の、複雑な想いに満ちた生活であった。“あの日”の記憶、原爆症の現実、戦争に対する感懐、そしてそれを乗り越えて生きようとする意志……。人類がうみだしてしまった核兵器という“現代の悪魔”の最初の実験場となった都市は、通りすがりの野口に大いなる問題を投げかける。そして、そんな中で、彼の甥が原爆症の症状を呈し始める……。本書は、著者の知られざる名作長編小説を、初めて文庫化したものである。昭和28年の初版刊行以来、一度、著作集に収録された以外は活字化されていない。阿川弘之ファンにとっては必携必読の作品であるとともに、核問題という人類の重荷を考える上でも、文学史上欠かせないものである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kiiseegen
4
絶版の本作品、どうしても読みたく図書館にすがる。著者唯一の原爆を扱った長篇作品。ジョン・スタインベックが本作の英訳本を読み大変褒めたらしいが、増刷は無いものか...。2022/09/26
ダイキ
4
原爆文学。阿川さんの初期に属する作品で、五十年近く復刊されることがなかつたらしい。理由としては、戦後といふ時代に際して阿川さん自身の立場が未だ確立してをらず、後に本作の内容と作者の思想・立場との間に齟齬が生じたからではないかと推測されてゐるさうです(天皇制の是非を問ふ件などもある)が、不明。被爆者の回想が中心となつてゐるためか、凄惨な情景描写でありながら筆致はどこか淡々としてゐる。寧ろ白血病で死んだ子供の解剖に立ち会ふ結末部が生々しさといふ意味では最たるもので、実見によるものであつたりするのだらうか。2019/08/09
kiiseegen
2
古書にて入手。再読。2023/03/30
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