内容説明
米大統領選→コロナワクチン→ウクライナ侵攻、次々に連鎖する陰謀論。誤情報をネットで流布する匿名の発信者を追い、デマに翻弄される人々の声を聞く――。高度化する“嘘”の裏側に迫るドキュメント。『読売新聞』長期連載「虚実のはざま」、待望の書籍化。
同じ事柄について話しているのに、「何が事実なのか」という根本的な認識すらも全く異なる人が増えている。虚と実の境界がどんどん曖昧になり、社会で共有されるべき大切な土台が少しずつ浸食されているのではないか。そんな違和感が膨らんでいた。コロナ禍がもたらす負の作用が、それを顕在化させつつあるようにも感じていた。
コロナというパンデミックは、一部の層の人間が利益を得るために計画され、人為的に引き起こされた――。通底していたのは、そんな被害妄想に近いものだった。そして、その陰謀論を信じて疑わない人々の叫びがネット空間に大量に吐き出されていた。
いったいなぜ、多くの人が引き寄せられるのか。私たちは当事者に直接話を聞こうと取材を始めたのだった。 (本文より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
105
人類史上かつてないほど情報が氾濫する現代だが、昔より情報処理能力が高まったわけではない。むしろ大量の情報に溺れて窒息寸前なところへ自らの信念や性格に合致したり、政治的経済的な不満や怒りに共感する意見に接したら、真偽を確かめずに正しいと思い込む。感染症に戦争が重なって明日が見えない今日、「正義」を信じて心の平安を得たい人の心の弱さが陰謀論に魅了されてしまうのだ。新型コロナに米大統領選絡みで異なる情報を信じる者同士の対立が激化しており、逆に信じない心の強さこそ大事だと訴える。確かにそれは人が最も苦手なのだが。2023/02/08
壱萬参仟縁
50
中高年、ユーチューブ:2021年1月24日からシリーズ5回が紹介(97頁写真)。デマの恐ろしさよ。。画像加工技術の編集ソフト精度が格段に上がり、画像だけでは真偽のほどがわからないという(182頁)。国立情報学研究所の越前功教授は、一般人でも偽り動画や画像を作り、他人を陥れたり、社会を混乱させたりすることができる(184頁)という。サイバー警察の仕事は増すばかりのようだ。調べるほどに罠にはまる(204頁~)というのも恐ろしい。。ナラティブ:物語、語り。特定の見方で語られた物語で、マーケティングでも共感手法に2024/11/23
なかむー
5
自分の見たいものを見て、見たくないものは見ない、というバイアスがある。実際に自分が信じたい事実を補強する意見ばかり目に入るな…と思い返した。ル・ボンの『群衆心理』では断言・反復・感染が群衆を操作する上で重要だとあった。エコーチェンバーも繰り返し同じ情報を聞く環境、とも考えられる。同じようなことを繰り返し聞いているうちに、「自分は大丈夫」と思っている人もいつのまにか情報にのめり込んでいくのかもしれない。2022/12/05
Tomitakeya
4
インターネットの世界は自分の好むだけになる。SNSで検索してお気に入りの世界だけに浸れる。気がつくと偏った情報に支配されてしまう。陰謀論に取り憑かれてしまう過程と人間関係の崩壊が裏付けを取った取材の上で述べられている。陰謀論をなぜ振りかざすかといえば、閲覧者が増えること、それがお金につながることを目的にしている人もいる。特にコロナ禍で不安になっているところに、その不安から逃れるために更に陰謀論に共感してしまう。AIの進化もあり、爆発的に情報が増えていく。情報リテラシーを高めることがひつようだ。2023/03/13
あんときのいくこ
3
エコーチェンバー、フィルターバブル。 確証バイアス。 人は見たいものを見て、信じたいものを信じる 「牛乳信仰は国策」とか自然食信仰にハマった時期があるだけに、ハマる状況がわかってしまう。幸い何事も継続できないタイプなので良かったけど… 2025/09/22
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