内容説明
「すごい小説を読んでしまった。
私はこの先も、何度も自分の血を辿るように
この作品を読み返すと思う」
――紗倉まな
「人は恋すると、罪を犯す。
運命でも必然でもなく、独りよがりの果てに。
その罪を明かさないのが、何よりの罰」
ーー中江有里
「私の顔、見覚えありませんか」
突然現れたのは、初めて恋仲になった女性の娘だった。
芥川賞を受賞し上京したものの、変わらず華やかさのない生活を送る四十男である「田中」。
編集者と待ち合わせていた新宿で、女子大生とおぼしき若い女性から声を掛けられる。
「教えてください。どうして母と別れたんですか」
下関の高校で、自分ほど読書をする人間はいないと思っていた。
その自意識をあっさり打ち破った才女・真木山緑に、田中は恋をした。
ドストエフスキー、川端康成、三島由紀夫……。
本の話を重ねながら進んでいく関係に夢中になった田中だったが……。
芥川賞受賞後ますます飛躍する田中慎弥が、過去と現在、下関と東京を往還しながら描く、初の恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クプクプ
77
タイトルは過激ですが、内容は落ち着いていました。川端康成や三島由紀夫の本を高校時代の恋人と読み合うシーンが効果的ですし、主人公の高校時代と現在の二つの時代が見事に描かれていました。田中慎弥はスマホを持たず、原稿も手書きだそうですが、時代に乗ろうとしないことで、かえって二つの時代背景を描けてしまった印象です。読んでいて、ところどころ映像が浮かびました。Twitterを駆使する平野啓一郎と対照的ですが、この作品で田中慎弥は平野啓一郎を上回ったと感じました。ぜひ、映画化を希望します。2022/12/01
沙智
8
かなり良かった。痛みに満ちた恋愛小説だ。著者の経歴的にもっと硬い小説かと想像していたが、全然そんなことはなかった。解説でも触れられているが、田中と静の小気味良い会話の掛け合いがとても楽しい。捲し立てるように喋る静がなんともいえない良い味を出してる。71頁の田中が語る過去のエピソードにその話盛ってるでしょと茶々を入れるところが特に良かった。2人ともやや性格に難があるが、目の前の相手に真剣に向き合っている。血の通った人間の物語であると強く感じた。2023/02/05
村山トカレフ
4
相変わらずたなしんは心象風景の描写がうめえ。くどくて、ねちっこくて、もどかしくて、生々しくて、まざまざとしていて、どうしようもなくて、残酷で、取り返しがつかなくて、生硬あわせ持っていて、生活臭が漂っていて、醤油臭くて、ひねくれていて、無邪気で、凶暴で、優しくて、無関心で、普遍的で、切なくて、悲しくて、ひたすらに美しい。可読性はけっして良いとはいえない作品が多い印象だが、本書はサクッと読める。静とのやり取りは軽妙でありつつも、ひりつく緊張感がある。解説はみんな大好き紗倉まなちゃん。あ、これサイン本だぜ。2023/03/13
Ayako H
2
買いました。やっぱり芥川賞作家は性に合わない。2024/04/05
冬藤
2
ひとことで感想を言うなら、最高の三角関係。だと感じてしまった。時間を経て回想で語られるがゆえなのだが。終わり間際に明かされるものはやはりそこまで行かないとわからないものだな、、という感じで感慨深かった。2022/12/01