内容説明
ハリウッド俳優Bの泊まった部屋からは決まって一冊の本が抜き取られていた――。客室係の「私」だけが秘密を知る表題作など、静謐で豊かな小説世界が広がる、“移動する”6篇の傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
276
表題作から始まる6話短篇集。人との特別な絆……絆って奴では無いですね。約束・断りの無い、秘密の密やかな関係性、決まり事がテーマなんでしょうかね。“密やかな秘密”って言うと、如何にも洋子さんワールドって感じがしますけど、概ねの傾向であり全てが嵌まる訳では無いのですけど。特に『寄生』は随分と違うのかも。特別な(?)関係性は一際目立つけど。おばあちゃんの寄生、可成りうざい。脛齧り的な寄生では無くてね。物理的( ໊๑˃̶͈⌔˂̶͈)。もー、大事な予定があるのに。好い彼女さんで良かったよ。末永く幸せに成りやがれ。2024/08/06
キムチ
79
濃密で不思議な世界。6篇の掌篇は見事に「紡がれた」言葉、情景が。2つの点の「移動」役者ともいえる人々は其々に定めの如く洗練された物腰、言葉遣い、思いやりで生きている。 「元迷子娘〜」「熱帯魚〜」で繰り広げられる小さな世界。弱肉強食とでも言うのか…子供の残骸が組み合わさり…つい昨日まで泳いでいたモノ達の骸がフンと化し。「約束された〜」のドラマも印象的。スターが1冊ずつ持ち去った本は彼とともに行くべき場所に向かった?「ダイアナと〜」タフタドレスにかけた儚い夢と連呼の言葉。安定した現実乖離の感覚は小川氏ならでは2025/07/08
エドワード
76
町の片隅に暮らす名もなき人々の、日々の哀歓を描く短編集。ホテルの清掃係は映画俳優Bと彼が宿泊するスイートルームの書棚の本に憧れ、バーバラは故ダイアナ妃の衣装の再現に至福を見出す。「黄色いチェックのスカートのお嬢様…」懐かしい響き!元デパートの迷子係の章のノスタルジアは格別だ。デートの直前に見知らぬ老婆に抱き着かれた青年、騒動の後のハッピーエンド、章題「寄生」と虫博物館の符合がいいね。異国の香りがする黒子羊の章。羊と園長の死後の幸福感が秀逸だ。絶滅した鳥を描いたメリーゴーランドが圧巻。表紙も美しいね。2022/09/10
こばまり
59
「手のつなぎ方を知らない子は一人もいない。その瞬間、彼らは一人ぼっちの迷子ではなくなる」という一文に胸がいっぱいになる。迷子になった私に声を掛けてくれた青年を、私はまだ鮮やかに覚えている。幼い私に話しかけるために屈んだ姿を。暖かなまなざしとその声を。2023/04/11
tsu55
59
小川洋子の短編集。 誰かを想うこと、誰かに想いを捧げること、誰かを援けることが、自分の人生を支えるといことか。 国籍不明の不思議な雰囲気が面白い。2022/09/05
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