内容説明
漢詩は、平安時代から現代まで、多くの日本人の心をとらえてきた。その歴史・地理的な背景や、日本の漢詩受容を押さえて、丁寧に作品を読み解き、漢詩の豊かな抒情の世界に遊ぶ。奔放自在な「詩仙」李白、謹厳実直な「詩聖」杜甫、閑寂の自然詩人・王維など、珠玉の名作を読む醍醐味を味わいつつ、自由闊達に読むことをも可能にする最良の入門書。
[本書の内容]
序章 漢詩をどう読むか
I 李白と酒
II 月の光
III 登楼・重陽
IV 杜甫の律詩
V 蘇州詩話
VI 閑寂・江南の春
VII 旅愁・シルクロード
VIII 唐詩と日本人
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
82
古来、日本人は漢詩・漢文に親しんできたが、戦後生まれで理系の私はせいぜい高校で漢文の授業を受けたぐらい。それでも無理に暗記した覚えはないが、今でも口をつく有名な漢詩(たいてい、その一部だが)が幾つかある。そんな漢詩の碩学による解釈を背景を含め、今改めて聞くと興味深く面白い。授業は漫然と聞いていたと反省。「西出陽関無故人」西のかた陽関を出ずれば故人無からん(王維)・「年々歳歳花相似 歳歳年々人不同」…花相似たり…人同じからず(劉廷芝)・「国破山河在 城春草木深」国破れて山河在り 城春にして草木深し(杜甫)⇒2022/11/18
榊原 香織
52
李白が好きすぎて 一杯一杯復一杯。 わかりやすく、漢詩入門としてよい本が出ました2023/02/10
さとうしん
12
要するに唐詩漫談。取り上げた詩の日本での評価や、関連する日本の詩歌、はたまた著者の体験も織り交ぜていて、唐詩入門と言うほどでもないが気軽に読める。2022/11/14
chisarunn
9
古典を読んでいると避けて通れないのが漢文。源氏物語にもあそこにもここにも有名漢詩を踏まえて、の文章が出てくる。いままでは流していたのだが、やっぱり一通りは読まにゃいかん、と覚悟を決めた。しかし敷居は限りなく高いぜ漢文学。そこで“最良の入門書”とあるこちらを。最近仙台へ行ったばかりだったので、”仙台”の地名が川内→千代→仙台(この仙台にしたのは伊達政宗公らしい)と移り変わったという話、その仙台は韓コウという人の唐詩から取られているという説が面白かった。(コウの漢字が出ない、すみません)2023/06/10
しおり
5
漢詩があり、その解説が続くのだが、現代語訳がなく進んでいく場合もあり、読み取れぬまま次に移ることも。ある程度知識がないと難しいかも。漢詩には郷愁とか別れとかハッピーではないテーマも多いけど、しっとりとしていて奥行きがある。自然と境遇を共鳴させて婉曲ながらもぐっさり来るところが魅力的だと思った。現代にその余裕は残ってないように思える。杜甫の「九日、藍田なる崔氏の荘」、杜牧の「九日、斉山の登高」、戴叔倫の「除夜石頭の駅に宿す」、王翰の「涼州詞」が良かった。読んだ後、目をつむってじわじわ現れる景色を楽しめた2024/06/17