内容説明
「図書館制度とは何か」を学ぶためには、図書館に関連する各法規を知らなければならない。従来のテキストは各法規の解説を中心に構成していて、法律科目を履修していない学生にとってはハードルが高いと考えた。
そこで、「法律を知らなくても具体的に想像しやすい内容の経営論から学んだほうが理解しやすい」という発想のもと、本書では類書とは順番を逆にして第9回「国立国会図書館、専門図書館の経営」までは経営論を、第10回「図書館関連法規」から制度論を解説する。
図書館経営については、図書館業界では「図書館の経営は公務員による直営がよく、民間委託はサービス提供の継続性があやしいから反対」という立場もあれば、「直営より民間のほうがいいサービスをしているではないか」という考えもある。本書は、地方公共団体の財政状況や図書館政策に応じて、直営方式ができればそうしたらいいし、難しければ民間の活力を導入すればいいという中立の立場から双方の多くの事例を紹介する。
図書館とはそもそもどういう制度なのか、どのようにして経営すればいいのか。初学者にもわかりやすく豊富な事例とともに解説する。
目次
はじめに
第1回 地方公共団体の仕組み
第1章 地方公共団体の組織
1 私たちが住んでいる地域は、どのようなまちづくりをしているのだろうか
2 言葉の定義
3 地方公共団体の組織と公立図書館
第2章 地方公共団体経営の基本ルール
1 住民税
2 税金の使い方
3 公立図書館は非営利経営
第2回 公共機関・施設の経営方法
第1章 地方公共団体のまちづくりの方向性と図書館の関わり
1 前提と考え方
2 言葉の定義
3 地方公共団体の総合計画と図書館
4 地方公共団体が策定した総合計画以外の計画と図書館
第2章 公共施設等総合管理計画
1 背景
2 兵庫県加古川市立加古川図書館の事例
3 東京都墨田区立ひきふね図書館の事例
第3章 ミッション、ミッション・ステートメント、ビジョン
1 前提と考え方
2 ミッション、ミッション・ステートメント、ビジョンの事例
第4章 マーケティング
1 前提と考え方
2 山梨県富士吉田市立図書館の事例
第5章 危機管理
1 前提と考え方
2 危機管理事例
第3回 図書館の組織・図書館員
第1章 組織構成
1 前提と考え方
2 地方公共団体の組織構成と公立図書館
3 組織構成の事例
第2章 図書館長の役割
1 言葉の定義
2 東京都墨田区立緑図書館の事例
3 千葉県八千代市立中央図書館の事例
第3章 人事管理
1 シフト勤務の事例
2 ハラスメントがない職場にするために
第4章 図書館協議会
1 言葉の定義
2 図書館協議会の事例
第5章 ボランティアとの連携
1 言葉の定義
2 佐賀県伊万里市民図書館の事例
3 福井県鯖江市文化の館(図書館)の事例
第4回 図書館の施設・設備
第1章 前提と考え方
1 図書館を建築物として見る視点
2 これからの図書館の施設・設備
第2章 図書館施設・設備の把握
1 図書館の機能と構成要素
2 館内環境など
3 千葉県八千代市立中央図書館の事例
第3章 複合施設の事例
1 宮崎県都城市立図書館の事例
2 沖縄県恩納村文化情報センターの事例
第5回 図書館のサービス計画と予算の確保
第1章 前提と考え方
第2章 図書館サービス計画の立案までの道のり
1 地方公共団体の概要とまちづくりの方向性の理解
2 地方公共団体内図書館の現状把握
3 他自治体の事例の把握
4 住民の要求の把握
5 問題点と課題の整理
第3章 豊橋市まちなか図書館の事例
第4章 図書館に関する経費の事例
1 茨城県龍ケ崎市立中央図書館の事例
2 東京都中野区立図書館の事例
第5章 地方公共団体の予算編成
1 地方公共団体の財政状況
2 特定財源と一般財源
3 義務的経費
4 予算編成
5 予算編成スケジュール
第6回 図書館業務・サービスの調査と評価
第1章 前提と考え方
第2章 図書館業務・サービスの調査
1 業務の測定
2 館内測定
第3章 図書館業務・サービスの評価例
1 資料面
2 利用面
3 経費面
4 項目の組み合わせ
第4章 外部による評価
1 アンケート
2 有識者や住民による評価
第7回 図書館の管理形態の多様化
第1章 地方公共団体の窓口業務の民間委託など
1 前提と考え方
ほか