内容説明
短篇は他のどんなジャンルよりも発想や展開において、また構成や叙述において自由で柔軟なものだ――。「私の文章作法」「短篇小説論」を中心に日本語論、自作解説を増補した新編集版。『短編小説礼讃』の著者による小説作法の書。巻末に荒川洋治との対談「短篇小説を語る」を収録する。 〈解説〉荒川洋治
【目次】 *=新収録
Ⅰ 私の文章作法
書くということ/待つ・聞く・書く/好きな言葉/散文の基本/小説を超えるもの*/不朽のジャンル/「僕」の問題*/うらぎる言葉*/幼年の文学*/土地の感覚*/小説と年齢*
Ⅱ 日本語について
ニュアンスについて*/昔の言葉/いい文章*/淋しい文章/私の国語問題/読書会にて/読者への手紙
Ⅲ 短篇小説論
短篇作者の仕事/贋の首飾り/チェーホフの星/チェーホフの現在/日本語のルナール/国木田独歩がいた町で/おのずからの形式/短篇小説の青春*/陳腐な運命/芥川龍之介の短篇/真剣な遊戯/三浦哲郎氏の短篇/猫のいる短篇/私の処女作*/父をさがす子*/『自転車』のこと*/短い形式*
対談
短篇小説を語る* 荒川洋治×阿部昭
解説 荒川洋治
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まこみや
49
『散文の基本』を読むと、達人から「お前は何もわかっとらん」と説諭されているような気がしてくる。解説で荒川洋治氏が勘所を適切に指摘しているので、一々の例はひかないけれど、自分が文章を書くことの意味や姿勢にも短篇小説の味わい方にもほとんど無頓着な半可通だったことを自覚させられる。梶井や志賀、チェーホフなんかを今までいくらか読んではきた。でも一体俺は何を読んできたのだろう。鑑賞力にはそこそこ自信があって打席に立ったが、ベテラン投手の老獪な球に三球三振を喰らったような気分だ。2024/02/16
tamami
48
ある雑誌に小作品を書く必要に迫られ、泥縄式に購入。著者の名前は知ってはいたが、作品はごく一部しか読んだことがなかった。本書は、題名にあるとおり「散文の基本」について、文章書き方から始まり、言葉の問題、個々の作家の作品・作家論まで、様々な媒体に寄せられたエッセイである。志賀直哉、芥川龍之介、三浦哲郎等々の作家・作品論など、そのどれにも対象とする作家のイメージがくっきりと浮かんできて、改めて紹介されている作品を読みたくなる。心が洗われる著者の文章を読みながら、55歳という若さで亡くなられたその人のことを思う。2022/10/01
踊る猫
33
なぜ阿部昭の書くものは面白いのか。それは、矛盾するが(そして皮肉に聞こえてしまうかなとも思うが)阿部昭が自分の書くものをそんなに高く買っていないからではないか? つまり気負いや衒いがなく、ただまっすぐに目に映る真実や手に触れられるタッチをそのまま記しているから、その愚直で一本気なところが文に現れていると思うのだ。この文章集でも著者は計算高さを見せず(それでいて蓄積された読書や人生経験は侮りがたしと思う)、素朴な筆致でチェーホフやモームや志賀直哉を称揚する。省みられにくい「渋さ」を守り続ける作家がここに居る2023/11/06
もち
3
言葉の意味、書くことの意味、何気なく使っている言葉について考えさせられた作品、特に長編と短編の考え方、風景描写についての賛否、確かに読者の中には風景描写、自然描写を切り捨て、読み飛ばす傾向私にはある。これは、人間の成熟の過程で捨て去られる感情なのか。子供のころはもっと、自然・風景への感性は研ぎ澄まされていたように感じた。何気なく、読んでいて、忘れていた感性を思い出させてくれた本。2022/10/23
読書熊
2
簡潔にして鋭い短編小説論2025/01/05
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