内容説明
神奈川県では横浜市の次に人口が多い川崎市は、工業地帯として発達した一方、怪異や人の業が渦巻くダークな都市でもある。各地の土地の因縁話の蒐集をライフワークとする著者が川崎の膨大な資料・文献から厳選した奇妙な話の行方を綴ったマニアックな実話ご当地怪談集。大手自動車工場に勤める男のもとに奇妙な電話がかかってくる「水底から」(川崎区)、橋脚に現れた少女の姿にまつわる土地の怪異「橋脚の少女」(高津区)など。また、川崎市出身の平山夢明がとっておきの川崎怪談を寄稿。自殺が多発する団地の近くにある食堂では…「とんかつ豚次」(幸区)ほか収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
82
実話怪談集。いやこれは凄い。ご当地怪談には土地の地霊を感じられるものも多いのだが、本書はそれがダイレクトに出ているよう。怪談というより民俗学的興味の湧く話が多く、読んでいて引き込まれるなあ。柳田国男の著作で親しんだコト八日とミカワリバアサンの話や、関東地方に点在する第六天の話、サイノカミの祟りの話等、昔話の伝承や民話を読んでいるよう。コト八日に目籠を伏せる話等知識としてあったけど、現地在住の人が話すとまた格別な感慨が湧くなあ。怪談だけではなく川崎という土地の持つ魅力がダイレクトに伝わってくる一冊でした。2022/11/11
眠る山猫屋
65
学生時代は通い、20代後半はよく遊びに行った川崎。多摩川の対岸で育ってもいて、土地勘は強い。子供の頃は遊びに行ってはいけない土地だったけれど(怖いオジサンがいっぱいいた・笑)綺麗な街に変わった川崎。そんな川崎を、オカルト方面から真面目な(?)考察をする本書。よく歩いていた場所にこんなにも怖い伝承があったとは。近代史的にも、登戸や生田には軍の秘密特殊兵器研究所があったのだなぁ。あの陰陽師もいたのかなぁ。平山夢明さんもいたくらいだしなぁ。いつかまた、訪れたいな。2024/09/29
sakai
39
最近、川崎が恋しくて川崎にまつわる本ばっかり読んでる。区ごとに章立てされているので、馴染みある話に辿りつきやすいのが嬉しい。怪談といいつつ、そこまで怖くない話もあるのと、1エピソードは短いので気軽に読めて良い。ご当地怪談本、川崎以外にもたくさんあるので気が向いたら他の都市のも読んでみたい。2024/01/28
きたさん
20
都市伝説や民俗学に興味があるならオススメしたい。地元に近い土地がいくつも登場していたので、臨場感を持って読めた。2022/12/28
澤水月
20
「在住の漫画家、押切蓮介さんからうかがった」ってパワーワード。川崎、怪談ときたら…やはりの平山夢明(3本寄稿)。凄まじい本気度の参照資料を渉猟し土地に伝わる霊体験、妖怪、哀史を浮かび上がらせる。メカゴ(籠の目)、片目にまつわる話や民俗学的興味そそる話だけでなく現代実話怪談も豊富(少女の姿が浮かぶ橋脚、大騒動懐かしい!川崎でしたか)。平山怪談、また平山原作で工業地帯ロケの映画「無垢の祈り」、「BAD HOP」などある種独特の迫力ある地と思っていたが初めの方の現在状況の俯瞰説明と地図が凄く理解助けてくれた2022/11/28