内容説明
世界の見え方が大きく変わる
仏教の思想を体系的にまとめた『アビダルマコーシャ』(倶舎論)が示す
「この世界のあり方」と、現代的な科学的世界観が交わるとき、
世界はどんな姿を見せるのか。
アビダルマ仏教が示す、超越者の存在や奇跡などの超常的現象を考慮しない、
原因と結果の関係で展開する機械的宇宙。
その物質、精神、エネルギー、時間、因果則などの概念はいかなるものか。
現代科学に通じるようで全く異なる世界観を提示し、
仏教と科学の類似と相違を探った心躍る知的冒険の書。
※本書は2013年1月に刊行された『仏教は宇宙をどう見たか』(DOJIN選書)を文庫化したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白隠禅師ファン
17
仏教の論説書である『倶舎論(アビダルマ・コーシャ)』の世界観を表した著書。『倶舎論』の全てを扱っているわけではもちろんないが、『倶舎論』が示すこの世を構成する物質、精神、エネルギーの世界を詳しく紹介する、名著だった。これで満足するわけにはいかないので、アビダルマを少しづつ掘っていきます。と、その前にこの著書をもう一周することにします!基礎はしっかり固めておくのが良いので。2025/08/21
俊介
16
仏教の古典の中でもとりわけ難解である『倶舎論』という理論書の解説本だ。あまりに難しすぎて、一般書で扱われることは稀だ。そういう意味でも本書は貴重な一冊。著者は、分かりやすい解説に定評のある佐々木閑氏。本書では、「タコの頭と足」などの、一見シュールな比喩を駆使し、この難解な書を極限まで噛み砕いてみせる。その力量はさすがと言うしかない。それでも難しいものは難しいのだが。だが、『倶舎論』が書かれた1500年前当時、仏教の思想家がどれほど緻密で高度な議論を行っていたか、その世界の一端を垣間見せてくれる。2021/09/14
わ!
5
一冊前に読んだ「須弥山と極楽」と同じく仏教の経典のひとつである「倶舎論」の本です。本屋では、二冊が並べて売られていました。「仏教は宇宙をどう見たか」の著者は、「須弥山と極楽」に巻末の解説を書かれており、その中で学生時代に「須弥山と極楽」の本で、倶舎論に出会ったという経緯が書かれています。まさに倶舎論の「因果」を思い浮かべる面白いエピソードです。二冊を立て続けに読んだのですが、重複した感じが起こらないのも不思議で、ともに倶舎論の概要を書いているのですが、アプローチの方法が異なっているからだと思いました。2024/01/30
kichy
3
難解とされる倶舎論の世界観を一般読者にもわかりやすくイメージさせることに成功しており、とても素晴らしい本。時間の流れは錯覚であり、一瞬一瞬が映画フィルムのようにコマ送りされているに過ぎないのだが、そこに不変の「私」が連続性を感じてしまう。時間は過去から現在に流れるのではなく、未来が現在に到来し、どんどん過去が積み重なっていくというイメージ。無限の可能性がある未来から現在や過去のありようによって現在この一瞬が選び取られるが、その瞬間に現在も過去になりそれがまた、将来の「現在」を決定づけることになる。2023/12/23
Go Extreme
3
『倶舎論』への誘い 仏教の物質論―法と極微 仏教がとらえる内的世界―心・心所 仏教の時間論―諸行無常と業 仏教のエネルギー概念―心不相応行法 総合的に見た因果の法則―六因と五果 分類によって変わる世界の見方―五蘊、十二処、十八界 仏教における精神と物質をめぐる誤解―山部能宜氏に対して2021/10/01