内容説明
自然がたたえる無限の色彩と、卵殻の輝きとが織りなす、懐かしき幻想の世界。
巻末で卵殻モザイクの作り方をわかりやすく解説。普及版として復刊。卵殻モザイクとは? 伝統的には、漆に卵の殻を塗り込め、磨きだし、卵の殻で図案を作る工芸としてつづいてきた。正倉院の御物の一部にも使われている。それが、昭和初期、矢崎好幸博士によって「着色卵殻」の技術が開発されて以来、桑原浜子によって、近代なる絵画的技法として新に発展することとなった。
【著者】
桑原浜子
1912年11月17日 東京に生まれる。父の死により、母の故郷甲府で成長する。1930年、山梨県立甲府高等女学枚卒業後、工芸家・矢崎好幸氏の研究所で卵殻モザイクを習得する。1933年、帝国美術工芸学校に入学。同校で卵殻モザイクの研究と日本画を学ぶ。2008年1月3日、御逝去。甲府市内の病院にて。
目次
1林の道
2搗屋の裏
3小さな教会
4福寿草
5びわ
6庭の花
7花屋の窓
8葉鶏頭
9巨摩野の春
10のうぜんかずら
11山ぶどう
12山裾の秋の花
13ざくろ
14山の秋
1510月のあじさい
16椿
17ほたる
18麦秋
19甲斐山なみ
20稔り
21草もみじ
22村山(こんぴらさん)
23草群
24冬の白根三山
25雪
26ランプ
27早春
28ココちゃん
29みゆきちゃん
30天女散華
31ペルシャの壺
32ひつじ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遠い日
2
初めて観る「卵殻モザイク」というアート。ところが解説によれば、「卵殻モザイクとは、昔からの日本の伝統工芸の一つとしてつづいてきたもの」だという。それを発展させて、誰にでもできる着色卵殻の技術の発明により、絵画的な表現がしやすくなったそうだ。とにかく美しい桑原浜子さんの作品たち。奇を衒わない自然の姿。植物や鄙びた風景。卵殻の処理方法も載っているけれど、気の遠くなるような工程だ。小さな破片を選び、色を着け、絵として成立させていく。超高度な貼り絵だが、こなれて凝縮された美があることに感嘆しました。2023/01/06