内容説明
自然の感情に反する市場秩序において、「無知である人間」は苦境に立たされる。そうした厳しい現実のなかで、したがうべき「自由の規律」とは何か。福祉国家を批判した、保守的な市場原理主義者ハイエクを超えて、全体主義への批判から自由論、議会改革論まで、ハイエクの「政治思想」を検討することが、この時代だからこそ重要である。
目次
序 章 なぜ今ハイエクか?
第一章 全体主義批判――“市場さもなくば隷従”
第二章 自由論――義務論と帰結主義の間で
一 社会主義批判――“人間の無知”と“自由の規律”
二 義務論的自由論――クカサスのハイエク解釈
三 帰結主義的自由論――R・クレイのハイエク解釈
四 義務論と帰結主義の併用――ハイエクの二つの顔
第三章 文化的進化論と議会制改革論――市場秩序を脅かす反市場的な自然感情
一 ハイエクの文化的進化論――方法論的個人主義から集団淘汰論へ
二 “意図せざる結果”の意味転換――個人の自由から“タブーの狡知”へ
三 議会制改革論――“意図せざる結果”後のハイエク的統治術
第四章 自生的秩序と政治権力――その現代的含意
一 目的独立的な自生的秩序――その政治権力との関係
二 現代的含意――二十一世紀の国際政治経済システムにとってのハイエクの意味
終 章 市場原理復権の理想と現実――とくに日本の場合
補論1 ハイエクにおけるマルクスの軽視をめぐって
補論2 文化的進化論の批判的継承をめぐって――その近年の動向についての素描
注
あとがき
参考文献
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ステビア
5
ハイエクの思想的格闘。面白いです。2013/10/14
liverpool0810
5
三章まではいい。特に後期ハイエクが市場秩序を守るために(あくまでも方便ではあるが)非合理的な宗教及びそれに準ずるものの果たす機能に一定の評価を与えたことは興味深く読めた。その評価の背景には実際の市場秩序が賞賛に値する努力が必ずしも報われるとは限らないという冷厳な事実とその事実が一般大衆に膾炙することが市場秩序を毀損させかねないというハイエクのジレンマがある。つまり「努力は必ず報われる」という信念以上に人を活動的にさせ効率的にすることはなく市場秩序の安定化に寄与するものはないが、一方でその信念は現実を直視せ2010/08/22
秦野弘之
0
微妙。記述が正確ならハイエク入門に前半を読むのは悪くないが。2010/03/17