内容説明
本書は、ニューカマーの子どもに対する教師の日々の実践を、参与観察をもとに詳細に描く。子どもに対して付与する表象、対処を思考する中で経験する葛藤、対処方略を構築し採用する過程で経験する葛藤、という三つの次元で考察する。ここには、教室で子どもと対峙する多くの教師が経験する、葛藤と困難の克服への示唆が含まれている。
目次
序文[佐藤学]
はしがき
序章 ニューカマーの子どものいる教室――教師の経験世界を問う視座
1 ニューカマーの子どもをめぐる教師の経験世界――本書の主題
2 先行研究の検討
3 教師の経験世界への接近
4 調査の対象と方法
5 本書の構成
第I部 差異に対する教師の認知――陥穽
はじめに
第一章 ボーダーの形成と調整――分析の枠組み
1 教室における文化の差異と教師
2 文化の差異――可視性の度合いという観点
3 文化の差異に対する教師の対処
第二章 差異が隠蔽されるメカニズム――ボーダーの置き換えと解消
1 文化の差異が教師には見えにくくなるという事態
2 ボーダーの置き換えと解消
3 差異に対する教師の認知と対処
第三章 複数の表象の様式の間における競合――「○○人」「日本生まれ日本育ち」という表象のもつ作用
1 教師内部における意味をめぐる競合
2 子どもの言動に対する教師の意味づけ――複数の表象間の競合ならびに表象のもつ作用
第II部 実践における教師の思考――葛藤
はじめに
第四章 実践における教師の思考――葛藤を分析するための枠組み
1 教師の葛藤と子どもの学びの経験への作用
2 専門的知識の風景におけるさまざまな物語――「履行すべき物語」「生きられた秘密の物語」「カバー・ストーリー」
3 教師の経験する葛藤
4 教師の模索
第五章 子どもへの対処をめぐる教師の葛藤と困難
1 教師の困難――二つのレベルにおける葛藤への着目
2 教師の葛藤と解決への模索
第III部 実践における教師の思考――対処方略の構築と採用における葛藤
はじめに
第六章 実践における教師の思考――対処方略の構築
1 教師の葛藤と対処方略の構築
2 教師の編み出すさまざまな対処方略
第七章 対処方略の構築と採用をめぐる教師の葛藤と困難
1 教師の葛藤と困難――三つの観点からの検討
2 対処方略の構築と採用をめぐる教師の葛藤と困難
終章 教師の経験世界――葛藤と困難
1 本書の要約
2 考察
3 残された課題
参考文献
あとがき
人名索引
事項索引
初出一覧