内容説明
新保守主義の旗手とみなされてきた社会学者ダニエル・ベル。本書では彼を、単一イデオロギーでなく豊穣な思想的立場の公共知識人として捉え直す。新保守主義はなぜアメリカや世界で強い影響力があるのか? リベラルにも新保守にも行き詰まる日本社会が模索すべき理念とは? ベルの理論的視座が混沌とした現代社会に切り込む。
目次
まえがき
序章 アメリカ新保守主義とダニエル・ベル
第一節 新保守主義とは何か?
第二節 ダニエル・ベルは新保守主義者か?
第三節 ダニエル・ベルとは何者か?
第四節 「公共社会学者」ダニエル・ベル
第五節 ニューヨークのユダヤ系知識人と新保守主義
第六節 本書の構成
第一章 第二次大戦とマルクス主義者ダニエル・ベル
第一節 ベルの思想的出発点としてのアメリカ社会党とニューヨーク市立大学
第二節 ニューディール論(1)ビッグビジネスと政府との連合
第三節 ニューディール論(2)ビッグビジネスによる軍需生産
第四節 ニューディール論(3)国際カルテル
第五節 「独占国家」論とアメリカ労働党結成構想
第六節 「独占国家」論の挫折
第二章 マルクス主義批判
第一節 合衆国におけるマルクス社会主義批判
第二節 「なぜ合衆国に社会主義は存在しないのか?」
第三節 中西部におけるアメリカ型ユートピアニズム
第四節 ニューヨークの社会主義
第五節 中西部の社会主義――ユージン・デブスとノーマン・トーマスの社会主義
第六節 中西部の社会主義がとったもう一つの道――「ノース・ダコタ・無党派連盟」の利益集団化戦術
第七節 アメリカ社会主義におけるネイティヴィズム
第八節 エスニシティ、リージョナリズム、マルクス主義
第九節 リプセットのアメリカ社会主義論――マルクス主義批判から「イデオロギーの終焉」へ
第三章 『イデオロギーの終焉』の同時代的文脈(1)――アメリカン・デモクラシーとマッカーシズム
第一節 『イデオロギーの終焉』の構成とその意味
第二節 マッカーシズムの要因(I)道徳主義
第三節 マッカーシズムの要因(II-1)ポピュリズムの平等主義と反主知主義
第四節 マッカーシズムの要因(II-2)ポピュリズムの陰謀史観
第五節 マッカーシズムの要因(III・IV)アメリカニズムと「地位政治」
第六節 アメリカン・デモクラシーにおけるアメリカ共産党とマッカーシズム
第七節 ベルのマッカーシズム論と二一世紀のアメリカン・デモクラシー
第八節 ニューヨーク知識社会におけるマッカーシズム
第四章 『イデオロギーの終焉』の同時代的文脈(2)――アメリカ・マフィアとエスニック・グループ
第一節 一九五〇年代アメリカ合衆国における「マフィア」の組織犯罪
第二節 ニューヨーク港湾労働の実態
第三節 ILAにおけるギャング支配
第四節 ILAとマシーン政治
第五節 エスニシティをめぐるマートン、グレイザー、モイニハンとの理論的応答
第五章 「イデオロギーの終焉」と福祉国家の登場
第一節 「イデオロギーの終焉」の意味と意義
第二節 文化自由会議におけるニューヨーク知識人と「イデオロギーの終焉」
第三節 「イデオロギーの終焉」論争――様々な誤解と批判
第六章 ポスト・マルクス主義としての「脱工業社会」論
第一節 マルクス主義から「脱工業社会」論へ
第二節 「脱工業社会」の特質
第三節 「脱工業社会」の「基軸原理」
第七章 「学生反乱」――コロンビア大学の事例
ほか