内容説明
このエッセイもまた、公開の日記帳だ。前向きで後ろ向きで、頑張り屋で怠け者で、かしこく浅はか、独特な人物の日々の記録だ(前書きより)――はじめての育児に奮闘し、新しい食べ物に出会い、友人を招いたり、出かけたり――。そんな日々はコロナによって一転、自粛生活に。閉じこもる中で徐々に気が付く、世の中の理不尽や分断。それぞれの立場でNOを言っていくことの大切さ、声を上げることで確実に変わっていく、世の中の空気。食と料理を通して、2018年から2022年の4年間を記録した、人気作家・柚木麻子のエッセイ集。各章終わりには書下ろしエッセイも収載。
1.うちにおいでよ 2018年1月~12月
2.うちの味、外の味 2019年1月~12月
3.そしてコロナがやってきた 2020年1月~12月
4.もう、黙らない 2021年4月~2022年3月
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
291
柚木 麻子は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。コロナ禍のお仕事&子育てエッセイ、母親になって以前より丸くなったかも知れません。 https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000057292022.html2022/11/05
モルク
145
四年間に渡るエッセイ集。「とりあえずお湯わかせ」の題名は桐島洋子さんの「聡明な女は料理がうまい」からとのこと。若い頃読んだ。すっかり忘れていたけど確かに読んだ。私も起きると先ずお湯を沸かす。とりあえずコーヒーを一杯、あとはポットに入れておくとなにかと重宝。本作品は幼子との子育て真っ最中コロナが蔓延。元々肺に持病がある柚木さんは普通の人以上に気をつけねばならず、保育園にも預けられないのにさらに仕事が…という生活、その大変さは凄まじい。笑えるもの、考えさせられるもの、いろいろあって楽しかった。2023/11/12
mukimi
142
コロナ禍の育児と仕事に葛藤する等身大エッセイ。活字を読む余裕の無かった産後2週間が過ぎやっとのろのろ読み始めたのが本書で大正解。疲労と閉塞感と不安を共有し伴走してくれる、戦う(戦わぬ日もあってよし)女性のための書。映画や書籍や友人や自己の内面など凡ゆる事柄へのアンテナ感度が抜群。なぜ女ばかりが男を赦さねばならんのだ、国民ばかりが政策を許容せねばならんのだとアンガーマネジメントの本を叩き捨てるくだり、両親が離婚した日の号泣バイトのエピソード、母が好きだから老いる自分も苦じゃないとの言葉に心を鷲掴みにされた。2024/02/25
Karl Heintz Schneider
135
柚木麻子さんにしては珍しいエッセイ。恐らく他にはないと思う。4年前から雑誌に連載していたコラムをまとめた物。連載が始まった時はちょうどお子さんを出産したばかり。子育てとコロナに振り回された苦労話がメインとなっている。「何も手につかない時はお湯を沸かせ。そうすればお茶を飲むなり野菜を茹でて一品作るなり最低でも部屋を加湿できる。停滞を脱出するとっかかりになる。著者の母上がいつも口にしていたこの言葉がそのまま本のタイトルになっている。どんな時でもお湯さえ沸かせばきっとあなたも大丈夫。読む人にそう語りかけてくる。2022/11/26
ネギっ子gen
103
2018年から2022年まで、NHK番組「きょうの料理ビギナーズ」のテキストにて連載されたエッセイを中心に、初めての育児とコロナ禍の中で直面したことや日々思ったことなどが綴られた、初エッセイ集。タイトルは著者の母親の口癖から。<何も手につかない時はお湯を沸かせ、そうすればお茶を飲むなり、野菜を茹でて1品つくるなり、最低でも部屋を加湿できる、いわば停滞を脱するとっかかりを最もハードルの低いところでつかめ、という家訓のようなものだ>と。元ネタは、桐島洋子『聡明な女は料理がうまい』ですか。懐かしい名前と書名。⇒2023/06/13