内容説明
「怪盗になる」そう宣言した幼馴染の蓮に仲間として引き入れられ、安西省吾は東京地方裁判所検事局を辞めてともに欧州に渡った。異国で成功した手妻師とそのマネージャーという体裁で帰国した二人は、しばらく日本で休養するはずだったが……蓮は揉め事を起こさないという約束をはぐらかし、次々と不可解な出来事に首を突っ込んでいく。帝国ホテルから一晩で消えた金塊、名家に伝わる嫁入道具をめぐる騒動、すべて一等が出る駄菓子屋の籤の謎――怪盗ロータスの華麗なる推理綺譚。〈帝都探偵絵図〉シリーズ、待望のスピンオフ。/【収録作】「グランドホテルの黄金消失」帝国ホテルに持ち込まれた金塊が一晩で消えた。/「特等席」名家に伝わる嫁入道具・貝合わせの行方を追う。/「埋める者 暴く者」湯治のはずが、何故か埋蔵金探しに巻きこまれ……。/「すべて当たり籤」駄菓子屋の籤引きが思わぬ騒動を引き起こす。/「光と影のおむすびころりん」貧しかった寺男の遺品を盗んだ犯人の目的とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
くたくた
39
手玉に取られる者の側の視点がなかなかに面白い。一番良かったのは、「埋める者 暴く者」。状況をコントロールしているつもりがいつの間にかコントロールされ、のっぴきならない状況に追い込まれるのは、『注文の多い料理店』を読んでいるみたいな面白さだった。そのほかの話もそれぞれに面白い。なにより、省吾が元気で過ごしているのが良い。彼のことは心配してたんだよ。若干の不安や鬱屈はありそうだけど、私の想像以上に蓮とともに、うまくやっているようで安心した。2024/10/13
rosetta
29
★★★✮✩シリーズは未読だが『帝都探偵絵図』シリーズのスピンオフ短編集。大正ロマンを背景に優雅で上機嫌、ルパンや二十面相並の変装の名人怪盗ロータスとお目付け役の幼馴染が事件に首を突っ込み、また自ら事件を起こす。ラノベ風の軽い読み物としてオススメ。2023/05/24
RIN
16
二人の関係はこの表紙が全て物語っている。お互いがお互いを一番に理解していると自負しているのに、その心は正反対。省吾が側にいれば無敵な蓮。蓮の側にいる自信の無い省吾。休養の為に帰って来た日本で、揉め事は起こさないという約束をはぐらかし不可思議な事件に関わっていく蓮の鮮やかな推理と華麗な暗躍。本来の姿である怪盗ロータスを封印すれば、彼はまるで名探偵の様に事の真相を暴き出す。欲しいものは手に入れる。それが例え大切な幼馴染みに全てを捨てさせる事になっても。人生は楽しい。この世で相棒は君だけだ。だから、共に行こう。2023/08/26
しましまこ
16
嬉しい新刊!知りたかったその後の二人。欧州から久しぶりに帰って来たのね。省吾が人目を気にしなくてもいい、欧州の2人も読みたかったよ。5つの事件はもちろん面白いんだけど「僕の人生はすべて当たり籤」と言い切る蓮と、自身の籤にはすべて蓮の絵が描かれているだろうと思う省吾。当たりなのか外れなのかわからない…なんて言わないでー!省吾に『大当たり』と思わせてあげてよ蓮。でも省吾のその思いがあるからこそ美しいんだよ、難しいー。美しきニア、今回もご馳走さまでした!2022/11/27
冬見
7
帝都探偵絵図シリーズのスピンオフ。怪盗ロータスもとい蓮と安西省吾元検事による推理綺譚。サブタイトルの付け方からして続編が出ても良さそうなスピンオフ。かつて別の道を歩むことを決めた幼馴染を、人生丸ごと盗み出した怪盗。伴走者として選ばれたことによる苦悩は今なお省吾の胸に影を落としている。何とも言えない絶妙な均衡と湿度を感じさせる物語。2025/09/25
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