内容説明
さまざまな動物たちの息づかいが、人間の生活のすぐそばに感じられた丹波篠山を舞台に、豊かな自然の中でくりひろげられた少年と動物たちとの交流を描きます。神社の夏祭りで買ったモルモットがどんどん増えていくなか世話する『モル氏』、冬枯れの田んぼから、あらんかぎりの力で飛び立とうとするタヒバリを、ひたすらねらいつづける『タヒバリ』など、少年が思う存分自然に親しみ、動物たちの生命を生き生きと感じる10編の短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
84
少年時代の自然との触れ合い、ありのままを描いた短編集。額縁の中の触れられない存在ではなく、掴み取れる動植物たち。私自身の子供時代を思い出し、甘く懐かしく、悔恨も湧き上がってくる。自然への憧憬や感受性が、子供時代の体験によって醸成されるであろうことはもちろんだが、単純に自然が豊かな田舎であれば良いわけではないとも思う。夕暮れ時のコウモリの群れ、刈り揃えられた芝生からひょっこり伸びたネジバナ、見過ごしていた私に教えてくれたのは都会育ちの夫だった。立ち入り禁止表示は多いが、都会にも自然はたくさんあるのだ。2022/05/25
テル35
68
「ガサガサと、枯笹を踏みしだく音が、奥の方でする。狐かもしれない。夜が目覚め、しいんと静まりかえった竹藪の中に、もののけの動く気配がうごめきかけている」単なる自然の描写ではない。野生の身体感覚が震えとなり、少年の多感な心を呼び醒す。「山」や「夜」、「野生動物」たちが主語になる里山である。綺麗に描かれた田園でなく、生命がぶつかり合うきびしさとあたたかみ。読んだ僕の「野生の心」と野生の身体感覚が開かれる。自然の圧倒的な勁さと、人の脆弱さ。それを感じ続けるきっかけの作品。そしてこの春、僕は丹波篠山を初めて訪ねた2026/04/28
麦牛
8
丹波篠山に行ったときに、河合雅雄氏及び河合兄弟について知り、この一冊からということで。少年期の自然や動物との触れ合いを描いた短編小説。ほのぼのした温かい感じかなと勝手に思っていたけど、全然違ってめっちゃ過激のガキ大将。モルモットを産み増やして売ろうとしたら、七十匹まで増えて手に負えんくなったとか、大魚を素手で捕まえたり、ひたすら蛇を殺したり。描写は詩的で、周りの自然がとにかく豊かで、人間との領域が分けられていない。昔の子どもはこうだったっていう典型で、郷愁漂う。ぼくたちが忘れようとしてるものがあった。2024/10/31
ぱせり
7
生きもの三昧の少年時代、というと、わたしは、明るさや喜び、憧れなど、何か甘美なものを思い浮かべるが、ここに書かれている少年時代は、生臭く、禍々しいといえるほどの暗さと背中合わせだ。病弱で学校を休みがちだった少年にとっての自然は、人との交わり以上に(苦さも含めて)濃厚なリアルだった。 2022/03/26
おかっち
6
この本は凄く大切な出逢いになった。 私はこのような自然の中で動植物と遊んだことのない身。かろうじて、泥遊び、山登りなどを経験し、現代の子よりかは、ゲームもない時代に育った。 それでもこの物語を読むと、危険と隣り合わせで、生命を味わいながら遊んでみたいと心から叫びたくなりました。動画や漫画より何より面白い一冊だった。 声を出して笑い、また、アドレナリンが出るような恐怖心が生々しく伝わる。 自然を壊す事は自分自身を破壊する事 人間だけは別物だ。人間だけが思いのまま自然を利用できるはずない。 2023/08/05
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