内容説明
二〇世紀を代表する作家・プルースト(一八七一~一九二二)。その生涯をかけて執筆した『失われた時を求めて』は著名だが、長大さや難解さから挫折する人も多い。本書は絵画を手がかりにそのエッセンスを紹介。彼が作品で描いた恋愛、同性愛、死、ユダヤ人、スノビズム、時間、芸術論などの主題をわかりやすく案内する。この大作の個人全訳を成し遂げた、プルースト研究の第一人者による最良の入門書。図版六九点収載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
107
著者は『失われた時を求めて』に登場する絵画の研究で学士院賞を受賞しており、訳書でも引用された絵を載せるなど美術と文学が交錯する視点からのプルースト理解は本業といえる。訳注では簡単な説明だけだった絵をカラーで取り上げ、作中の描写に込められた思いや取り上げたテーマなどを解説し、あまりに膨大な迷宮の如き作品世界を案内していく。スワンや話者マルセルの恋愛にベルゴットの死、シャルリュス男爵やブロックら登場人物の容姿などを具体的に思い浮かべたり、ユダヤ人問題や同性愛などについての考えを文字通り絵画から読み解いていく。2023/02/07
やいっち
79
仕事の合間に楽しんだ。吉川訳『失われた時を求めて』は、リアルタイムで刊行されるごとに読んできた。七年ほど付き合ったことになる。その前に、井上究一郎訳で、一部…全体の三分の一か…を読んだし、鈴木道彦による抄訳版…三(?))のものを読んだ。三度目の正直で、今度こそ全巻読破と、腰を据えて読んできたわけだ。2022/10/07
みこ
27
小説で読むのはかなりしんどいブルーストの「失われた時を求めて」には多くの実在の絵画やそれを連想させる描写が存在する。そして、それらが物語の進行に大きく関わる。そんな絵画と小説の解説。名画をカラーで見られることが何より嬉しい。そして何より今まで自分に縁のなかった「失われた時を求めて」に親近感が湧いた。これは何より本書の素晴らしさによるものである。2022/10/29
みつ
26
著者は岩波文庫版の『失われた時を求めて』の訳者。今年の夏にかけて1年以上かけて読む中では、行替えなしの文が延々と続きページを覆っているところどころで、語り手始め登場人物たちが言及する絵画(他に建築も多数)に頁が割かれると、何かしらほっとしたことを思い出す。この新書は、絵画の方を手がかりに関連部分を中心に読み解く試み。絵のサイズの点では語り手の追体験は難しい面もある(サイズの記載も欲しかった)。語り手(そしてプルースト自身)が当時の書物の写真で知った絵画(当然モノクロ)のいくつかは、カラーで掲載されている。2022/12/15
かふ
21
『失われた時を求めて』の絵画による描写からプルーストが文学で絵画を描写していくまでの、創造的進化という文学の楽しみなのかと思う。それは、『源氏物語』が和歌の影響を受けながら歌物語として成立するような、絵画物語と言っていいかもしれない。しかし、プルーストの場合は、絵画・音楽・文学と模倣(絵画だと模倣のデッサン)から独自の作品を生み出していく物語が『失われた時を求めて』なのだ。それは絵画を知ることによって物語世界が広がっていく開かれた文学なのである。新書にしてはカラー絵が素晴らしく絵画に興味が持てた。2023/04/23
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