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内容説明
温暖化、新型コロナウイルスの流行、異常気象……世界が危機に瀕する今、私たちは誰も取り残すことなく、この問題を解決するための道筋を探さなくてはならない。資本主義の暴力性や破壊性を正確に認識し、その上で、資本主義とは異なる社会システムを構築すること――。『資本論』を記したカール・マルクスの、主に未刊行のノートから、エコロジーの思想を汲み取り分析する。ドイッチャー記念賞受賞作。
【目次】
第一部 経済学批判とエコロジー
第一章 労働の疎外から自然の疎外へ
第二章 物質代謝論の系譜学
第二部 『資本論』と物質代謝の亀裂
第三章 物質代謝論としての『資本論』
第四章 近代農業批判と抜粋ノート
第三部 晩期マルクスの物質代謝論へ
第五章 エコロジーノートと物質代謝論の新地平
第六章 利潤、弾力性、自然
第七章 マルクスとエンゲルスの知的関係とエコロジー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
69
ドイッチャー賞受賞本が底本。したがって基本的にマルクスの「読み解き」であり、そちらの術語に慣れないと難渋かもしれない。確かに新たに出された『資本論』関連の抜粋ノートを丁寧・精緻に読んでおり、先行研究を批判しながら新たな解釈を与えているようで、そこが受賞のポイントなのだろう。だが、マルクスを全面的には受け入れていない(その思考の姿勢とかは評価しているが)者からすると、ここまで絶対的な価値を置いてマルクスに依拠する姿勢には距離を置かざるを得ない。なんだか読んでいて宗教の解釈みたいに感じてしまうのだ。2024/01/27
Ex libris 毒餃子
16
農業とマルキシズムの関連を精緻に考察することによって、資本家の「あとは知らん」という無責任な態度を批判する本。エコロジーマルクス主義が最近は話題だが、新MEGAの編纂が進んで史料が整理されてきたおかげか。廣松版ドイデかマルクスの農業本があるから読んでみるか。2022/12/19
koke
15
先行研究のようにマルクス(そして/あるいはエンゲルス)からエコロジー的要素をつまみ食いするのではなく、『資本論』において自然の素材的次元が経済的形態と並んで重要であることを示す。その際、晩年の抜粋ノートだけにこだわるのではなく、疎外論まで遡ってマルクスのエコ社会主義を再構成しようとしている。ただし、著者も認める通り『資本論』はあくまで未完の体系に留まる。それでも「自然に優しく」「自然の復讐」以上のことを言うために、マルクスの経済学批判と環境批判の可能性を同時に擁護する、という企図は納得のいくものだ。2023/04/01
xv08nx
5
『人新世の「資本論」』がとても刺激的で本作も読みました 既に時代に飲み込まれ効力を無くしてしまったと思っていたマルクス、その仕事を丁寧に読み解き、今までのイメージを払拭、資本主義による環境破壊が進む現在にこそ必要なものを鮮やかに取り出して目を開かされます 特に物質代謝論の解釈は強烈です 本当に資本と結び付いた科学技術に環境破壊を止めることが可能なのか、 別の新たな支柱、資本の暴走を制御する体制が必要なのか、 考えさせられます2023/02/11
tsubomi
4
2023.04.19-06.03:少し難しい用語もあるけれど、全体として『資本論』とマルクスとエコロジーについてわかりやすく解説している本。200年以上前に生まれた人がここまで考えていたとは・・・マルクスって天才だな!と思いました。その当時の人は、彼の発想を正確には誰も理解できなかったんでしょうね。新しい人、マルクス。そして著者は、目の前の問題を先送りにしているだけの‘SDGs’は地球の置かれた状況を大きく変えるものではないとして、まったく新しい社会システムの構築を提案している点が私たち地球市民の希望。2023/06/03