内容説明
私たちはいつまで「できること」を証明し続けなければならないのか?
絶え間ない能力の発揮と成果を求められる現代社会。
「主体性」を祭り上げ、人々が互いにせめぎ合い、自己さえ搾取せざるを得ない社会構造。この現代の病理を特異な感性から解き明かし、「創造性」「和解」をもたらす新たな「疲労」のかたち――「なにもしない」ことの可能性を探る。
倦み疲れ、燃え尽きる現代社会への哲学的治療の試み
ドイツ観念論から出発し、現代思想界の先端を走るビョンチョル・ハン、その代表作にしてヨーロッパ20カ国以上で刊行されたベストセラー、待望の邦訳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
58
なかなか歯応えのある1冊。久しぶりに、脳味噌が動いた感じがする。否定性、肯定性からくる思考と行動。こういう視点に触れたのは初めて。何かをする・しないの考え方。何かをし続けることの結果としての疲労とその蓄積。しないことを選択することの有意さ。果たして、自分はどうなんだろうと考える。何かしていないと・・という部分が無いとは言えないと思う時もある。一方で、ただ、ぼんやり・のんびりとする時間もあるし、それでいいと思っていることは大切にしたい。2026/06/16
sayan
41
ドイツ哲学の旗手と注目される著者。我々は「能力」社会で、社会を変える力ではなく自らを搾取し疲弊させる能力に翻弄されると身も蓋もない。新自由主義に紐づけ、禁止の否定=規制緩和は多様な働き方をもたらすも、実際はWワーク無しでは困窮、成果をださないと次の契約がない、と不安に苛まれる状態を生んだ。この事は肯定的な力(計画、自発性、動機付け)に縛られ、死(鬱病含)に至るまで自身の最適化に明け暮れる、と著者の分析は容赦ない。「自己責任」という概念が下支えする能力社会と試読すると、私見だが著者の議論にリアリティが増す。2021/11/13
ちくわ
21
規制によって強制する社会から、自由な現代社会になったものの、自由になった現代は自分で自分を強制するようになってしまった。言っていることはシンプルでしたが、そこに気付くか気付かないかが、自分の身体や人生を守るための重要なポイントだと感じました。際限のない目標や計画といったプロジェクトに覆い尽くされた生活の中から、いかに、生き生きとした「今」を確保できるか。そのためには、やはりいったん立ち止まることが重要でしょうか。(☆5)2025/01/13
しゅん
16
原著は2010年刊行。現代は否定性ではなく、肯定性の過剰の社会となっている。その社会はマルチタスクの注意を個人に要求し、人は永遠に頑張り続ける。結果、人々はうつ病・注意欠陥多動性障害にかかる。否定性の病としてのウィルスではなく、肯定性の病としての鬱。アーレントの「活動的な生」とは交わらない疲労としての社会において、心の休息である「深い退屈」をいかに形成するか。著者の着点は、「疲労」をマイナスの機能だけでなく、人々をつなげるものであるというプラスの機能があるというところにいきつく。2023/02/28
天晴草紙
15
朝井リョウの「イン・ザ・メガチャーチ」の関連参考図書として読んだ。もっとも、AIによると朝井リョウは参考文献として本書を挙げていないので、直接の関係は不明だ。疲労社会という題名は現代をうまく言い表していると思った。多くの思想家を引用して自説に導いている。暇であることや休むことを肯定的にとらえている点は評価できる。うつ病の原因について、「過剰な肯定性」が生み出す病で外的要因ではなく自己搾取で自分自身を限界まで追い込む結果だとしていることは理解できなかった。組織や会社や学校などの外的要因は問題ではないのか。2026/06/29
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