内容説明
水俣病を巡る闘争はどのように生まれ、全国的な運動に展開したのか? 渡辺京二や石牟礼道子の知られざるコミットを明らかにしつつ、運動の精神に肉迫する決定版。
今日ただいまから、
私たちは、国家権力に対して、
立ちむかうことになったのでございます――。
最もラディカルで大規模な公害闘争として知られる水俣病闘争は、どのように生まれ、全国的な闘争に展開していったのか? そこには「運動方針の最優先事項は患者の意思である」とし、徹底して裏方に回った渡辺京二と石牟礼道子の存在があった。知られざる彼らのコミットを明らかにしつつ、水俣病闘争が問いかける「精神」を躍動感豊かに描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
37
「はじめに」にあるように、米本浩二は本書を「水俣病闘争に興味をもった人がすぐにアクセスできて、闘争を見渡すことができる簡便な一冊」を目指して書いている。確かに水俣病の、しかも闘争に焦点を当てた簡便な一冊というのは、あるようでなかなかない。それは、闘争にも複数の側面が存在し、それを一冊にまとめることが困難な作業だったからだろう。米本は、その複雑な闘争史を、石牟礼道子と渡辺京二を中心に描くことを選択する。(つづく)2022/12/26
まると
21
水俣病が衝撃的に伝えられた当時のことをぎりぎり見聞きできていない世代なので、どれほど過激な闘いがあったのか、映像的に理解できていなかった。筆者は元新聞記者だけに文章が平易でその状況がよく伝わってきた。概括的に水俣病を学ぶにはよいテキストだと思う。石牟礼道子さんと渡辺京二さんの共闘の仕方は精神面からして尋常ではなく、患者に寄り添って主導するお二人の存在なくして闘争は成り立たなかっただろうこともよくわかる。幾度も引用された「苦海浄土」をもう一度読まねばならない。詩的で捉えがたい文章の理解が次は進むに違いない。2023/08/21
︎💓ひかる💓
3
水俣病と言う言葉は知っていました言葉だけは。最近ニュースでもやってた。もう少しだけ詳しく知りたい!と言う欲求に駆られ図書館で借りた本それが"水俣病闘争史"です。自然豊富な海で採れる魚やワカメなどが死に、その魚を食べたであろう猫が「猫てんかん」といってフラフラ~と歩いては死んでいく、人間も。水俣病は九州だけでなく新潟でもあったんですね。水銀って怖いモノなんですねむかしの体温計は水銀でしたね。2024/03/24
belier
3
水俣病闘争史の基本書となる本と思う。独特な点は、渡辺京二の日記や石牟礼道子との手紙を多く引用し、複雑な人間模様もあった闘争の裏側まで見せてくれたこと。運動における渡辺の役割が大きかったこともわかる。また71年後半から頭角を現した川本輝夫氏に頁を多く割いたのもよかった。この人の熱意が、燃え尽き気味だった渡辺や石牟礼を再び奮い立たせたように思えた。明らかに被害者ながら諦めていた人たちを巻き込む情熱、チッソを追い詰める交渉力。抗議など無駄という冷笑的な風潮の今だからこそ、この川本氏に学ぶべきものは多いと思う。2022/09/28
ポルポ・ウィズ・バナナ
2
◎排水浄化装置サイクレーター(水銀除去効果がないのを知りながら設置)◎従業員による互助会批判。補償金ではなく見舞金。「将来、工場排水が原因だと分かっても補償金の要求は行わない」という条項を盛り込む(あまりにも酷いのでのちに国側から無効化。当然だ)◎「誰が信用するもんか。それに裁判にかけるほどお金があるのかね」工場総務部長◎石油への原料転換が完了して後に公害認定◎公害等調整委員会が署名を偽造していたのである。調停申請者たちの筆跡が同じ(どころか名前を間違えていさえする)2022/10/10
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