内容説明
相模北条氏・越後上杉氏・陸奥伊達氏と周囲を強大な勢力に囲まれながら、戦国を生き抜いた、常陸の戦国大名・佐竹氏。成立から戦国大名となるまでの軌跡を、重要な合戦や一族・家臣団構成などから解き明かす。近年注目が集まる関東の戦国時代を解き明かす最後のピースが埋まる!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
27
「西の人」たるぬこ田は、悠揚迫らぬ姿を以て流れる利根川を越える時、「遠くに来たなあ」と感慨を覚える。新幹線や車もなく、900年前、常陸平氏の引きにより、常陸に来住した新羅三郎義光はどのような感慨を覚えたのであろうか、と、巻頭論文から、妙な事を考えた。関ケ原の合戦でさしたる働きもできず、秋田へ移封されるまでの長い歴史を、初学者たるぬこ田も通覧できた。常陸北部から陸奥南部に至る地域の方が、佐竹氏の影が濃いものだなあ、と思った。名作『神無き月十番目の夜』の世界観の一端に触れたというのも大きな余滴であった。2021/09/15
サケ太
20
佐竹氏は面白い。関東の名家佐竹家の由来から、戦国時代における活動、家臣構成まであって興味深かった。 2021/10/31
MUNEKAZ
14
戦国期を中心に中世の佐竹氏を扱った論集。アンソロジーとは思えぬほど論集としてのまとまりが良く、義重・義宣親子を中心に、中世から近世への移行期を乗り切った北関東の雄の実像を描いている。興味深いポイントとしては、反北条陣営の盟主となるきっかけとなった手這坂合戦の価値や、関ヶ原合戦での腰の据わらぬ対応に蘆名家を継いだ義広の影響があったのではないかというところ。どちらも地縁や婚姻、盟約で影響力を拡大してきた佐竹家の特質が現れているようで面白い。また東国独自の「洞」による家中編成も詳しく扱われている。2021/08/28
組織液
12
「思い浮かぶ人名が出てこない」はじめに、からこれは笑いました。戦国期を中心に、中世の佐竹氏についての研究の動向をまとめた論集です。武田上杉北条などと比べれば確かに存在感がない佐竹氏ですが、東国において確かな地位を築いていたことを実感しました。特に「洞」と呼ばれる権力編成や江戸氏、小野崎氏、大掾氏などの国衆との関係、朝鮮出兵での名護屋在陣の影響などが興味深かったです。鎌倉、室町期の佐竹氏についても通史的にですが知ることができていい収穫になりました。2023/07/11
フランソワーズ
6
戦国前史も充実。本編になる戦国時代にしても、その短くないスパンの中で、佐竹氏がいかに諸情勢に対応し、変質していったかを論述。沼尻合戦、郡山合戦についてはある程度、言及されている本も多いけど、手這坂の戦いとその意義についてはあまり知らなかったので、収穫。でも一番は、佐竹氏家臣団でしょう。これだけの大々名にかかわらず、家臣団にまで及んでいない歴史一般書ばかりだから、これは大変良かったです。2021/07/10