内容説明
シークワーサーの台木に、甘い蜜柑の穂木を接ぐ接ぎ木の映像を見た主人公は、幼い頃の生々しい匂いが満ちた混乱の記憶を呼び起こしてしまう「接ぎ木」。
聡子の友だちは14歳になってすぐに病気で亡くなってしまうが、数日後の夕方、誰もいない音楽室から知っているピアノの曲が聞こえて、亡くなった友だちに思いを馳せる「迷鳥(まよいどり)」。
死者に触れてしまったことでしばらくの期間、物忌みの日々を過ごさなければならなかった平安時代の貴公子・在原業平は、その日々を手の先からするりと消える蛍になぞらえた。現代にもまた、儚い思い出から抜け出そうと生きる男がいる「蛍」
などをはじめ、場所も時代も立場も様々な人間模様を、まるで空想と現実が混ざり合ったような不思議な物語として描く珠玉の短編24編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いっちゃん
16
1946年産まれの高樹のぶ子さん。作品中にYouTubeが出てきます。柔らかい雰囲気のSFが主で、たくさんの短編が入っています。自分が80歳近くなったときに、小説を書くことが出来るかと思えば、高樹のぶ子さんが現役で書いていることに励まされる人はすごく多いのではないかと思います。編集された方も1番心をうたれたのが最後の春・菜の花レターだったのではないかな。2023/01/09
peace land
3
高樹のぶ子らしいというか、ますます高樹になってきた。 幸せな人と思う地味な努力はしているのだろうけれど、報われる人2024/04/03
miki
0
現実なのか、現実じゃないのか、春夏秋冬を巡りながら、24のトリップをさせていただきました。春からはじまり、春で終わるところがなんだかいい。ラストの菜の花レター、感動しました。2023/01/10