内容説明
本書に収めたのは昭和14年に発売された大川周明著「日本二千六百年史」の初版本であるが、同書は発売早々ベストセラーになったものの、源頼朝や足利尊氏を讃え、徳川幕府を高く評価していることを問題視した軍部や右翼の一部から「国体違反」「不敬」などの批判が浴びせられ、発禁の告発を受理した検事局から削除と訂正を求められた。このため昭和15年からは改訂版となり、問題の箇所は削除された。そこで本書においては、改訂版で削除された不敬罪違反部分をあえて傍線で示し、読者の参考に供することにした。ちなみに改訂版は戦後、今度はGHQによって追放図書に指定された。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tomoichi
23
読んだのは、毎日ワンズ版。大川周明による日本史論。不敬罪違反で削除された箇所も復原しているが、今日の社会に生きる私には首をかしげるところも多くあり興味深かった。また彼がキリスト教に対して好意的に書いてるのも驚きでした。イスラム教も研究していた記憶があるのでそれも関係あるのかな?2022/01/29
onasu
23
日本史の始まりが皇祖から説かれるのには、戦後教育を受けてきた身には違和感ありありだが、その後には、さほどの違和感を感じないというか、流石は戦前でもベストセラー、すとんと納まるように書かれている。 ただ、教育勅語が文面だけ見れば、間違ったことがないように見えるのと同じように、明らかに現代の多くとは違う歴史観で書かれており、また地政学的環境の異なることも明白。 すとんと納まるのは、ストーリーによるものであって、それこそが怪しいのだが、異論であっても、発禁にならない現代のありがたさと、難しさも感じられた。2018/04/23
金吾
21
○通史ではなくポイントを押さえながら進みます。当時の知識人の典型的な一つの例を知ることができます。天皇に対する考えは一貫しており興味深いものがありました。2022/01/12
CCC
14
大上段に構えたタイトルはアレだが、思っていたほど珍妙なことは言っていなかった。基本視点が上に向いていて下方向を見ていないきらいはあるが、それも時代背景を考えると致し方ないと思う。ただ歴史書としては価値判断が過剰に差し挟まれていると感じた。評価だけならまだしも、ちょくちょく大仰な修辞が入っていて情緒的な印象を受けた。格調は高いのだけど客観的な文章には思えなかった。2021/07/05
いりあ
12
思想家 大川周明が第二次世界大戦が勃発した1939年(皇紀2599年)に発表した歴史書。日本2600年の歴史を独自の視点で論じてます。高天原から江戸幕府の終焉まではかなり詳細に記述されています。源頼朝や足利尊氏への見方は面白いです。ここに書かれている事が当時の日本人にとって一般的な考えだったかは疑問ですが、日本民族が、普通に日本民族としていられた時代の歴史観を垣間見ることができ、目からウロコな内容がたくさんあります。あえて今の時代に読むのが良いと思いました。本書は世界維新に向けての提言で終わります。2018/11/22