内容説明
絶望の青春──ジャック・ロンドン自伝的物語
20世紀初めのアメリカ西海岸オークランド。若い船乗りマーティン・イーデンは、裕福な中産階級の女性ルースに出会い、その美しさと知性に惹かれるとともに文学への関心に目覚める。生活をあらため、図書館の本を読み漁り、独学で文法と教養を身につけたマーティンは作家を志し、海上での体験談、小説や詩、評論を次々に書いて新聞や雑誌に送るが一向に売れず、人生の真実をとらえたと思った作品はルースにも理解されない。生活は困窮し、絶望にかられ文学を諦めかけたとき、彼の運命は一転する。
理想と現実の狭間で闘い続ける若者の孤独な栄光と悲劇を、自らの体験をもとに圧倒的な熱量で描くこの小説は、多くの作家や芸術家に影響を与え、読者の心を揺さぶり続けてきた。一世紀前の主人公の苦闘は、苛酷な格差社会の入口に立つ現代の若い読者にも切実に受け止められるだろう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ27
53
500頁、重かった。名訳なので読み易いが内容はそうさせてくれず、咀嚼しながら読み「下した」筆者本、3冊既読だが、自伝ともいわれるこの作、血反吐感満載。実際、1916(世界中が暗闇)尿毒症と長期多量のモルヒネ摂取により死去した人物。私みたいなちゃらんぽらんからすると生きるのに苦しかった、しかしそれは宿命だったのかなんて感じ入った。諸々の社会条件の相違する女性ルースとの出会い。美と教養に衝撃を受け自ら、文学への道を歩み始める。ラスト「人は死して自然に還る」ごとくあっけなかったが。最後に心通じ合ったプリセンデン2023/06/28
風に吹かれて
25
労働者階級というより下層階級出身のマーティンは恋した上流階級の女性にふさわしい人間になろうと独学で勉強し詩や小説、社会評論などを書き世に認めてもらおうと奮戦するが…。 いくつものエピソードがそれぞれ素晴らしい短編でもあり、読み終えたときの満足感は大きかった。人間の世の重さがずっしりとのしかかってくる作品であるが、作中のマーティンの日々が読み手を励ます。 →2023/09/11
Vincent
11
新書版刊行を機に4年ぶりの再読。このうえないカタルシス、やはり傑作。美と知の探求者マーティンの激烈な生きざまに今回も圧倒されっぱなし。決して真似ができないというか大半の人々はもっと気楽で堅実な賢い生き方を選ぶでしょうよ2022/10/16
無能なガラス屋
7
「自分の周囲のいっさいの生あるもの-腐りかかった野菜や石けんの泡のにおい、姉のだらしない姿、ヒギンボサム氏のあざけり顔-が、夢であった。実際の世界は頭の中にあったから、彼の書く物語が、その頭から生まれ出る数多くの現実の断片なのであった。」2022/11/26
geromichi
4
良い小説でした。2022/09/07