内容説明
帰省するのはいつぶりだろう。大学進学を機に上京して十四年、忙しさにかまけて実家から足が遠のいていた私は、新幹線で金沢に向かっていた。まもなく旅立つであろうミャアを見送るために(「ミャアの通り道」)。離婚以来、自暴自棄の生活を送っていた女性の家のベランダに現れた茶トラが、生活を思わぬ方向へ変えてゆき……(「運河沿いの使わしめ」)――肉親を亡くした時、家庭のある男を愛した時、離婚して傷ついた時…… ふり返れば、いつもかたわらに猫がいた。人生の様々な場面で猫に救われてきた女性たちの心洗われる七つの物語。「犬を亡くした私を救ってくれたのは猫でした」――著者インタビューも収録!
目次
ミャアの通り道
運河沿いの使わしめ
陽だまりの中
祭りの夜に
最期の伝言
残秋に満ちゆく
約束の橋
刊行記念インタビュー いつもかたわらに猫がいた――猫と女性の七つの物語(青春と読書2019年11月号掲載)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
273
ねこねこ短篇7篇。ねこがバリバリの主役という訳でも無いけど、人の生活の中に自然に溶け込む様に入り込んでいるのね。ねこは基本的に自然体。でも人の方がその姿を見て、自身に置かれている境遇とかに気付かされる事になるのだね。中では『運河沿いの使わしめ』が良かったかな。全篇通してリアルねこ風に描いているのですけれど、本作の茶太郎を見るに「ねこはその様な行動は取らないなぁ」と思いつつのフィクションの良い所ですよね。『最期の伝言』はねこは出て来るし、ねこなんだけどねこじゃないとか( ໊๑˃̶͈⌔˂̶͈)。2025/07/10
さてさて
153
『猫の匂いにはきっと魔力がある。身体の奥底の強張りがゆるゆる解けてゆくようだった』。さまざまな形で『猫』が必ず登場する7つの短編が収録されたこの作品。そこには、『猫』と共にある暮らしがさまざまな視点から描かれていました。『猫』の飼育経験のない私にもそんな『猫』との暮らしの魅力が存分に伝わってくるこの作品。『猫』という生き物に対する見方が変化もしていくこの作品。『猫好き』な方には必読と言い切って良い、『猫』に始まり『猫』に終わる、もう全編が『猫』一色に彩られた、それでいて読み応え抜群な素晴らしい作品でした。2024/07/11
ふう
86
ままならないことの多い人の世。確かなものがあったはずなのに、いつの間にか大切なものを見失っていく…。そんな人々と、そっと、ときには気ままに寄り添ってくれる猫たちとの7話の物語です。猫好きとして共感できる部分も多く、猫を愛おしんでくれるというだけで温かい気持ちになれる作品でした。とくに好きなのは、亡くなった元恋人の猫を引き取る女性の話と、何匹もの猫を飼って見送り、最期にその猫たちのもとへと橋を渡る女性の話。その女性が語る「猫好きはすべての猫を好きになる。~略~すべてが愛おしく、すべてに心踊る。」本当にそう。2023/04/30
そら
79
同郷の唯川恵さんの小説を久しぶりに手に取る。一話目は東京で暮らす女性が飼い猫の危篤を聞き、金沢の実家へ向かう描写から始まる。日々の暮らしに追われ故郷から足が遠退いてしまうことはよくあることだ。20歳の猫は家族同然で姉弟が集まるきっかけとなり優しく旅立っていく。七つの物語は喪失感を抱えた女性たちに寄り添う猫たちの物語でもある。別れや過去の後悔、未来への不安。どんな時も寄り添ってくれる小さな鼓動や体温があったからこそ明日を迎えようと思えたのだろう。去りゆくものと今生きるもの。終わることは始まることなのだ。2022/11/13
アクビちゃん@新潮部😻
58
【にゃんのまつり2024・2023ナツイチ】単行本で読んでいたので再読。7つの短編すべてが、本当に良い❣ 再読なのに、何度も何度も涙腺崩壊😭 読み終えた後、温かい気持ちになり、猫はもちろん、生きるもの全てに愛を捧げたくなります💓 そして、猫を愛おしく感じる自分を誇らしく思います。猫好きな人は、必読です❣ そして、猫は苦手という人こそ必読です😁2024/02/22