内容説明
気鋭の評論家、初期の瑞々しい歴史書
小津は大戦中、兵士として大陸を転戦した。戦後の名作と興行的「失敗作」から浮かび上がる戦争の傷あと。新たな小津論にして昭和史。
※この電子書籍は2011年1月にNTT出版より刊行された単行本に増補記事の収録・加筆を行った文春学藝ライブラリー版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
軍縮地球市民shinshin
14
単行本で既にかなり前に読了しているが、文庫化に際し増補の論文3本が収録されていることを知ったのでその部分だけ読んでみた。小津安二郎監督の映画を従軍経験の視点から分析してみたものでなかなか面白い。ただ歴史学の研究ではないような気がする。2022/12/13
kentaro mori
2
「日本的」と語られる小津映画にはなぜ戦争が描かれないのか。誰もが薄々と感じていたが問うことのできなかったその謎に迫る傑作。⚫︎私たちはなにか、とてつもなく大きな勘違いをしてきたのではないか。現実の婚姻が欠落した小津という映画作家が作為的に捻出した「問題にならない程生温かい」イメージに、現存する日本家族の「リアル」を勝手に読み込み、逆に本来彼こそが「リアル」に描出しうるはずであった戦場の光景の不在を、特に疑問に思うこともなく見過ごしてきた人々-それが戦後、この国で「日本人」を構成することになる。だとすれば、2024/01/11
chiro
1
気鋭の歴史学者のよる小津安二郎論。著者の歴史家としての視点からの小津評はもちろん大筋では他の映画評論家によって詳にされた小津像を大きく変えるものではないが時代背景をもとに撮られた作品群についての記述はむしろ当時の日本がどういう国柄であってそん中で小津の描くモチーフが当時の人々にどういった影響を与えたのかという時代考証の視点からも面白いものであった。2022/11/23