内容説明
私は本を諦めない──今村翔吾初エッセイ集。
第166回直木三十五賞を受賞し、作品だけでなくテレビ出演などでも注目を集める著者の初エッセイ集。地元・滋賀の情報誌に連載された「湖上の空」を始め、新聞や雑誌などで発表されたエッセイ・書評などを収録する。
織田信長や石田三成など滋賀にまつわる人物のエピソード、文学賞の仕組み、年号について、季節の果物について等々、折々の話題のほか、作家を目指したきっかけや、自著に込めた思い、忘れられないヒーロー、少年時代の思い出、家族やダンスインストラクター時代の教え子との交流など、著者の素顔が見えてくる。
「人の評価がいかなるものであっても書き続ける。いかなる声も正面から受け止め、ただ黙然と書き続ける。一人でも多くの人に『面白い』と思って頂けるために」とは、デビューシリーズ「羽州ぼろ鳶組」の読者に向けたメッセージ。また、直木賞受賞後、新聞各紙に寄稿したエッセイも網羅する。
「たとえ誰が諦めても私は本を諦めない」
「たった一冊の本が、次の本との出会いを作り、揚げ句は書かせるに至り、一人の作家を作った」
「私に夢をくれた出版界を微力ながら盛り上げたい」
こうした著者の熱い思いが胸を打つ、必読の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
269
今注目の直木賞作家が、これまでの人生·作品·滋賀愛を熱く語るエッセイ集。滋賀県在住の作者であるから、タイトルの湖とは当然琵琶湖になります。大阪人から見る滋賀というのは琵琶湖しかなく、冬期には米原あたりの積雪で新幹線を遅延させる迷惑極まりない県っていう印象があります。なんて言うと「琵琶湖の水止めたろか!」と脅されるわけなので、これからも仲良くお願いします。なんやかんや言って、滋賀県さん尊敬しています。2022/12/29
しんごろ
250
作家の今村翔吾のどう誕生したかわかるエッセイ。雑誌と新聞掲載のエッセイなので、内容が重複してるのはご愛嬌かな。けっこう家族思い。前職では、父とはいざこざがあったらしいけど、それでも家族愛が素敵だ。そして、京都生まれながら、滋賀県愛が素晴らしい。なるほど、こういう経緯があるから、今村翔吾作品は、どこか優しさがあるのかと納得。そして、このエッセイから、時代小説ばかりだけど、読みたい本も増えた。幼少の頃、作風、作品、プライベートなど全てをひっくるめて、何をやらせても今村翔吾は今村翔吾なのである。2022/10/10
いつでも母さん
196
どこを切り取っても『今村翔吾』こうして今村さんは成り立っていたのだなぁ‥ちょっとツンと来た。初のエッセイ集。今村ファンには堪らない。少しずつ読むはずがページを捲る手は止まらない。書き下ろしの2編も沁みる。あとがきまで丸ごと今村翔吾を堪能した次第。またいつかエッセイ集でも会いたいのは私だけじゃないはずだ。2022/10/24
修一郎
170
元ダンスインストラクターってことは知っていたけどもそれが家業でしかも父親は有名な指導者だということは初めて知った。ダンススクールは隆盛で弟さんが継いでいるんだとか。生い立ちを率直に語ってくれていてとてもうれしい。なんだか申し訳ないぐらい。京都出身,中高は奈良,今は滋賀県に住んでいて,御近所を描くだけでも一生分の小説のネタがあるという。ずっと時代小説を読んで生きてきたっていう筋金入りの読書家の今村さん,小説家になるべくしてなったのだね。2022/12/21
hiace9000
169
湖国滋賀の隣県に住む私もまた、湖上の空と湖渡る風に魅了されている一人である。今村歴史時代小説のおもしろさのひとつに「没入映像力」があると私は思っている。活字が並ぶ行間から、ある刹那にガツン!と鮮やかな情景が立ち上がり、人馬の嘶き、剣戟の声、緑野の風香までもが読み手の五感を駆け巡り始めるのだ。今村作品にハマっていく方はほぼほぼ、読中にこれを体験済のはずだ。それを、何とエッセイにまで用いるとは! 作品の魅力に引けを取らない作家その人の魅力。熱さに炙られる心地良さ。さあ湖上の空の下、また新たな本を開くとしたい。2023/01/30