内容説明
この恋は、地獄につながっている――。
女はなぜ、男のために火付けをし、火あぶりになったのか(「八百屋お七」)。
女はなぜ、道ならぬ恋におぼれ、自ら鉋(かんな)で胸を突いたのか(「樽屋おせん」)。
女はなぜ、ふしだらな下男と駆け落ちし、心を喪ったのか(「お夏清十郎」)。
江戸時代の人々の注目の的になった恋の事件の裏には、
悲しい“まこと”と、優しい“ほら”があった――
心中、駆け落ち、不義密通。
江戸のスキャンダルをまとめた井原西鶴の代表作『好色五人女』を大胆に新解釈した、胸に刺さる悲恋時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
72
井原西鶴が『好色五人女』をどう書き上げたのかという設定で物語は進んでいる。「八百屋お七」「おさん茂兵衛」「樽屋おせん」「お夏清十郎」「おまん源吾兵衛」が微かに違う設定で描かれているのが楽しい。えっ、お七さんって美少女だったのでは?お夏ってこんなにあどけないの?という気分で読み進めておまんの物語では西鶴の自分語りになっていく。作者らしく元ネタの魅力も「別伝」も堪能できる贅沢な作品。2023/05/30
よこたん
43
“金で買えんような色恋が、この世の中でいちばん始末が悪い、いうことや” ほらのなかに、そっと潜むほんま。笑いのなかに、潜むかなしみ。恋は盲目、あほやなあと笑わば笑え。夢見心地のあとに待ち構えるは、地獄。わかっていても突き進む。集められた話の種を、西鶴があんじょううまいことまとめ上げる。抱えていた自分自身のかなしみも一緒くたに。ほんまはどないやったんなんか、誰にもわからへん。周防さん独特のフェロモンがあちらこちらに効いていて、すこしぽぉっとなりながら読んだ。八百屋お七がブサイクやったやなんて、ほんまかいな。2023/01/05
りー
30
西鶴の「好色五人女」の元になったお話を想像して描かれた本。最初はお七をごく自然に脳内美少女設定で読んでいたので、途中で「えっ?!」となった。で、なるほどなぁ…と。他のお話もそれぞれ苦いものだった。個人的には、お夏清十郎の最後が一番ぞっとした。物語にするには、凄惨な現実を一時忘れさせてくれる美しさが必要で、ただしそれをメッキに見せないための一匙の本当があれば良いと。さて、この本の西鶴はどこまで本当なのだろう?なーんて、全く興味が無かったのに調べてみたい気になって、全くこの作者さんには踊らされてしまう!2023/05/15
rosetta
26
★★★☆☆井原西鶴『好色五人女』をリライト。江戸の風を感じられたしまあまあ楽しめた。八百屋お七以外はそもそも全く内容を知らないのでどのように換骨奪胎しているか想像もつかないが、実は最終話で明かされる。最終話「おまん源五兵衛」は西鶴本人の遍歴を焼き直したことになっている。前に読んだ『身もこがれつつ』なんかもそうだったけど、この作者はBLお好きなご様子ですか?2022/11/14
信兵衛
23
色恋のどろどろした話は苦手なもので、どうしようか躊躇したのですが、読んで正解でした。さすがは周防さん。2022/11/03




