内容説明
日本の植民地政策のもとに設立された朝鮮銀行。その営業実態は軍部の大陸侵攻とも深くかかわっており、とりわけ日中戦争期以後の日本の軍費調達に重要な役割を担っていた。国力の乏しかった日本は、日銀券を増発するかわりに、中国連合準備銀行との預け合など「金融上のやり口」を駆使して、植民地通貨を発行した。これにより内地経済の崩壊を防ぎつつ戦争の継続が可能になったのである。朝鮮銀行関係の極秘資料にも精通していた著者が、歴史に隠れたその実態を緻密に描きだす。
目次
はじめに
第一章 第一国立銀行の朝鮮進出
明治四年、金本位制採用
第一国立銀行、朝鮮へ進出
本位貨幣を持たない朝鮮
韓国白銅貨の密造増加
ロシアと結ぶ韓国宮中政府
韓国で流通する日本通貨
第一銀行が韓国の中央銀行に
韓国の白銅貨を回収
伊藤博文、初代統監に
第二章 韓国併合を進める日本
韓国の自治育成を図る伊藤
韓国中央銀行設立決定
韓国移住のための東洋拓殖会社設立
伊藤統監の反対
桂首相は韓国併合促進論者
伊藤統監の辞任
韓国銀行設立最終案
韓国銀行の開業
三・一運動おこる
ハルビン駅で暗殺された伊藤博文
第三章 朝鮮銀行、満州へ進出
明治四十四年、朝鮮銀行へ名称変更
西南戦争の苦い経験を生かす
新一〇〇円札発行
「朝鮮銀行の過去及将来」報告書より
朝鮮銀行、満州へ進出
銀本位の中国
軍票の回収で正金銀行の勢力を拡大
現状容認の正金銀行vs大陸積極論の朝鮮銀行
第四章 第一次世界大戦と中国借款
日本へ流れこむ黄金の洪水
韓国貨幣消滅
奉天省と借款契約締結
大隈内閣の対中国政策の混乱
経済外交で日華親善を図る寺内内閣
交通銀行借款の筋書き
〝日支貨幣混一併用〟進まず
〝円外交〟の試み、西原借款
西原借款失敗の背景
第五章 シベリア出兵と鮮銀券の〝シベリア出陣〟
ロシア革命勃発
日本軍のシベリア出兵
北方進出の準備を整える朝鮮銀行
鮮銀券〝シベリア出陣〟
ルーブルの急落
第六章 ロマノフ金貨の買い取り
ロマノフ王朝保有の金塊
オムスク国立銀行支店の金塊の行方
金塊の行方を追う日本軍
セミョノフの金貨、朝鮮銀行に預け入れ
金貨八〇箱を満鉄で強行輸送
「セメノフ金塊問題解決案細目」の取り決め
朝鮮銀行に集まるルーブル金貨
金貨を〇・九六掛けで買い取り
第七章 金融恐慌時の朝鮮銀行
大連取引所の金建て失敗
資産内容悪化
不良債権処理体制、効なし
進まぬ再建計画
台湾銀行休業、各地に取付け波及
昭和十六年に整理終了
鴨緑江の電源開発に貸出
第八章 満州事変と中国の幣制改革
「満州某重大事件」
満鉄経営悪化の原因
満州事変勃発
満州中央銀行設立
銀価の国際的暴騰
中国の「財政整理大綱」
朝鮮銀行の発行権回収を唱える高橋是清
リース・ロスの中国幣制改革案
華北金融独立工作
預金等を満州興銀に引継ぐ
失敗に終った華北金融独立工作
第九章 日中戦争と戦費の調達
鮮銀券の下落
通貨戦争で敗北
中国連合準備銀行設立
進まぬ発行準備の集中
朝鮮銀行と連銀の預け合契約
営業の中心が中国に移る
日銀代理店となる中国の支店
〝紙でやる戦争〟の仕組み
第十章 太平洋戦争下の朝鮮銀行
敵性銀行を接収
インフレによる中国勘定の膨脹
水膨れする業績
敗戦の影
増える発行高と利益
鮮銀券の増発要因
軍事費の現地調達
終戦時に預け合債務を全額返済
〝大陸に渡った円〟の終焉
第十一章 終戦と朝鮮銀行の閉鎖
内地支店閉鎖と鮮銀券の増発
三十八度線による南北分断
南北で異なる接収後の対応
鮮銀券から切り離された発行準備
鮮銀券の現地印刷
日本印刷局製造の鮮銀券、無効に
第十二章 韓国銀行発足と朝鮮戦争
ソウル陥落、略奪された鮮銀券
韓国銀行券を日本で印刷
戦乱下の通貨交換
敵性分子が使う鮮銀券の交換阻止
最小限に食い止めた経済攪乱の被害
おわりに
朝鮮銀行年表
参考資料
文庫版解説 空気中より軍資金を作る 板谷敏彦
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