慶喜のカリスマ

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慶喜のカリスマ

  • 著者名:野口武彦【著】
  • 価格 ¥2,200(本体¥2,000)
  • 講談社(2022/09発売)
  • ポイント 20pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062181747

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内容説明

慶喜がこれまで正当な扱いをされてこなかったことの蔭には、ふたつの決定論史観が作用しています。ひとつは王政復古史観、もうひとつはコミンテルン・ドグマ。どちらも慶喜に「封建反動」のレッテルを貼り付ける点では、奇妙に一致するのです。本書は野口氏が満を持して放つ「慶喜と幕末」です。幕末の数年における彼の眩い輝きと没落、明治以降の沈黙をとおして「ありえたかもしれないもうひとつの日本」が浮かび上がります。


 歴史上、「多くの人びとの期待を一身に集めて登場したのに、その期待を完全に裏切った」人が何人かいます。後世からみると「あんな人物に当時の人はいったいなぜ、希望を託したのだろう」と不思議に思うのですが、たしかにそのとき、彼にはカリスマがあったし、時代は彼を舞台に上げたのです。その機微を明確に描き出すことに成功したものが、すぐれた評伝なのでしょう。
 さて、近代日本でこの種の人物を探すとすれば、その筆頭に挙げられるのは徳川慶喜でありましょう(ついでにいうと、もうひとりは近衛文麿)。しかし、司馬遼太郎の『最後の将軍』を読んでもどうにもこの人のことはよくわからない。
 慶喜がこれまで歴史の専門書からも歴史小説からも正当な扱いをされてこなかったことの蔭には、ふたつの決定論史観が作用しています。ひとつは王政復古史観、もうひとつはコミンテルン・ドグマ。どちらも歴史を行方の定まっている一方交通の方向量のように考えて、慶喜をもっぱら否定されるもの、乗り越えられるべきもの、敗北ときまったものと扱ってきて、この人物に本来ふさわしい出番を与えてきませんでした。慶喜に「封建反動」のレッテルを貼り付けて戯画風に単純化する点では、ヴェクトルは正反対でも両学説は奇妙に一致するのです。
 本書は幕末について書きつづけてきた野口氏が満を持して放つ「慶喜と幕末」です。幕末の数年における彼の眩い輝きと没落、明治以降の沈黙をとおして「ありえたかもしれないもうひとつの日本」が浮かび上がります。

目次

プロローグ─徳川慶喜をどう書くか
第一章 英邁公子
第二章 将軍後見職
第三章 一会桑政権
第四章 落日の幕府
第五章 慶喜の政権構想
第六章 大政奉還は戦略だった
第七章 鳥羽伏見の戦い
第八章 東帰始末
第九章 江戸帰還、そして退隠
第十章 沈黙の半世紀
プロローグ─気の衰え

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

i-miya

42
2013.12.01(読んだわけではありません、2013.11.30日経新聞朝刊、文化欄から)(著者=) 大阪文化担当、田村広済。 (見出1=) 没後100年、研究進む。 (見出2=)徳川慶喜、洋画家の一面。 (見出3=美術史に位置づける動き。(絵=1)『蓮華之図』(東叡山護国院蔵)、『西洋風景』(久能山東照宮博物館蔵)(見出4=)由一同僚=中島仰山から学ぶ。 (見出5=)博物的で、説明的。幕末、高橋由一、原田直次郎、五姓田義松、浅井忠らを経て黒田清輝で一応の落着という位置づけ、洋画家。 2013/12/01

Gummo

13
江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜(1837-1913)の評伝。「慶喜という政治家には、頭脳明晰、言語明瞭、音吐朗々と三拍子揃っていながら、惜しむらくは、ただ一つ武将には不可欠な蛮勇、クソ度胸といったもののもちあわせだけがなかった」など、教科書的記述にとどまらいところが下手な歴史小説よりも面白い。名門出の英邁公子としてカリスマ視された時代、様々な不運に襲われついには朝敵とされた時代、沈黙と不作為を貫いた隠遁の時代。彼にもし蛮勇が備わっていたら…。この国の形はもっと違うものになっていたかもしれない。2013/08/05

ちい

3
先日読了した「正妻」からの本書◆慶喜を褒めそやすでも、コケ下ろすでもなく当時の資料に基づき書かれた慶喜。頭脳明晰、言語明瞭、音吐朗々と三拍子揃っていながら、武将には不可欠な蛮勇、クソ度胸といったものをもちあわせなかった、と分析しているが、だよねーと思う。「自己愛の人」と「正妻」に記されているが、ホントそう思う。2022/02/12

ren5000

3
この本を読んで思ったことはこういう時代に生まれた人は何か突出してなければいけないということかな?慶喜さんはすべてにおいて及第点以上なんだけどそれが却って邪魔になったのかも?逆に慶喜がとことん暗愚だったら歴史は変わっていたのかもしれない。2013/09/09

asukaclaesnagatosuki

2
野口武彦先生がご病気から立ち直られて、書かれた本とのこと一気に読みました。先生の一連の幕末物では慶喜公への辛口の記述もあり、自分も司馬遼太郎が描く慶喜像に不満あって、決定的な場面で踏ん張り無く、周囲の人間を振り回す結局はボンボンな困ったちゃんという慶喜のイメージを抱いていましたが、野口先生は実は慶喜の大ファンだそうで、驚きながらも、なるほどと思ったことでした。2013/09/07

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