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内容説明
和歌、水墨画、俳句、茶道、武士道など、禅は日本文化に深く浸透し、日本人に影響を与えている。欧米に禅の教えを広め、大きな影響力をもった大拙の代表作。その全体像をはじめて日本語訳した完全版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
12
本来『不立文字』のたった四字で禅を言葉で表すことは封じられている。真の意味で禅に触れるにはただ黙って修行するしかないのだけれど、文字として書物としてそれに触れることで文化として禅を知ることはできる。禅的なマインドを大切にしそのおかげで大成したという経営者の方々のお話などたまに目にするけれど、修行も悟りも修証一等。何かを得るために修行するわけでも、威張るために悟りを欲するわけでもない。禅により垣間見える「何か」を異世界で役立てようとする試みはナンセンスなのではとぼんやりと感じた。2023/10/02
豆電球
11
ここまで難解だと読むのを放棄してもおかしくないのに、どうしてもこの世界から逃れられませんでした。禅と武士、俳句、茶道との関係性は特に読んでいて非常に面白く、日本人の根底に無意識に横たわる禅というものの存在を感じずにはいられません。個人的に禅に近い武士と言えば足利尊氏はじめ足利家を思い出すのですが全く触れられておらず違和感。夢窓疎石はもちろんの事、後醍醐や楠木まで出てくるのに。よく見れば戦前に書かれた本なのですね。逆賊扱いの尊氏が登場しないのもまぁ納得。あと現代人には馴染みの薄い剣術にページを割きすぎかな。2022/09/30
amanon
8
訳文のためか、著者独特の鮮烈な文体を味わえないという憾みは残るものの、それでもやはり豊穣な内容と独特の魅力に満ち溢れた一冊。とりわけ読み応えがあったのは、解説でも言及されている剣術について論じた章。人を殺す技術である剣術が芸術である。にわかに信じがたい…もしくは今日では問題になりかねない言述だが、その是非はともかくとして、著者の深い知見から出たものであることは確か。また、実際に剣道をやっている人でこの箇所を読んだ人がどれだけいるのか?ということが気になる。禅に対する見方に根本的な揺らぎをもたらす一冊。2022/11/19