内容説明
あれ、なんか変だな……。
気づいたとき、あなたはすでに別世界。
奴隷を求めた男の前に現れた“奴”、哀切なる猫SFなど、現実と幻想の狭間に迷い込む傑作短篇集。
仕事仕事仕事ください……。意のままになる奴隷を求めた男の前に現れた“やつ”は仕事を求め続ける……。表題作ほか、不思議で哀切なる猫SF「ピーや」、恋人との会話がどんどん食い違ってゆく「信じていたい」、戦争の傷痕を異様な迫力で描く「酔えば戦場」などに加え、第一長篇『燃える傾斜』の原型となった「文明考」などの初期未収録作3篇を収録。
読めば世界がずれてくる、ぶれてくる。気づいたとき、あなたはすでに別世界。現実と幻想の狭間に迷い込む傑作短篇集。まずは一篇、踏み出してみませんか?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
73
奇妙な味を持つショートショート集。「ピーや」が絶品と聞いていたのだが、読んでいるとそれに違う事無き名作。こういう空気惹かれるけどきつい。他の諸作も読んでいるとどことなく筒井康隆や星新一を連想させる所もあり、あの懐かしさを感じる昭和の空気の中で書かれたという事が実感できる。両者に比べると日常から離れる事なく、そのうちに生じる異物感を描いたものが多いように感じるなあ。あと会社員をテーマにした作品、その悲哀を感じさせる物が多いが、新自由主義の洗礼を経た今だと牧歌的にすら感じる。総じて粒よりの短編が揃ってました。2023/01/14
mihya
40
巨匠のSFショートショート集。 時代を感じるものも多かったが、それはそれとして楽しんだ。 印象的なものはいくつかあったが、「ピーや」「その夜」「蝶」が強く残った。 「ピーや」は流石に名作。根本の部分は表題作の「仕事ください」と似た感じだが、全く違うイメージだったり2023/02/03
ひさか
24
2022年9月竹書房文庫刊。日本SFを牽引した大御所の一人、眉村さんの1961〜1970年発表の不思議系27編の作品集。奇妙な妻、ピーや、酔えば戦場、なんかは読んだ当時、結構インパクトあったのを思い出しました。今でもセンス・オブ・ワンダーがあります。巻末の日下さんの編者解説も面白い。眉村さん存命の時に出版できなかったのだろうか。眉村さんが、日下さんの解説にどう反応するかを見てみたかったです。2022/11/23
ソフィア
12
昔の作品なのに、時代を感じさせない発想と世界観。宇宙人が出てくるSFが得意でないのですが、この短編集は日常生活と進化した未来が混ぜられている世界観の作品が多かったので、読みやすかったです。2024/01/29
本の蟲
11
日本SF作家第一次世代のショートショート集。長編シリーズ「司政官」ぐらいしか読んだことがなかったが、なかなか楽しめた。不思議・不条理・不気味な話が多く「世にも奇妙な物語」っぽい。読みやすく、語りに時代を感じることはなかったが、団地・サラリーマンの生活・物価からわかる当時の世相、戦時が絡む話もある。昭和は遠くなりにけり。2022/12/15