内容説明
旅客機墜落事故の唯一の生存者である12歳の少年エドワード。両親と兄を失い、生きる気力を失っていた少年の6年に及ぶ成長の日々が、事故が起きる直前の機内の状況と交互に語られる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シャコタンブルー
73
旅客機墜落事故で191名が死亡。唯一の生存者である12歳のエドワードは奇跡の少年として注目されるが・・その事故で両親と兄を失ったエドワードの喪失感は余りにも痛ましく抜け殻のようだ。常に無気力で心身共に病から抜け出せない状態が永遠に続くかのようで、息苦しくなってくる。同級生のシェイだけが心の奥底に溜まっている濁りを救い出し生きる意味と存在価値を知らしめる。二人が送られきた手紙を通じて、遺族の祈りや願いを知り覚醒する様子も鮮やかだ。旅客機内での人間模様とエドワードの成長が交互に描かれ緊迫感も素晴らしかった。2022/07/27
ケロリーヌ@ベルばら同盟
66
家族と搭乗した航空機が墜落、ただ一人生き残った12歳のエドワード。物語は事故後、母の妹夫妻に引き取られた彼の6年間と、航空機が墜落事故を起こすまでの数時間が交互に描かれる。ミラクルボーイ、悲劇のヒーローと世間の同情と注視を受けるエドワードの心身に刻まれた深すぎる疵。彼を守り、立ち直る手助けをしようと心を砕く叔母夫妻。航空機に乗り合わせた人々の来し方と状況が繊細かつ濃密に綴られ、良く知る人を案じるような気持ちで読み進めた。エドワードに送られた手紙と、それらが彼に与えた影響の顛末が秀逸。素晴らしい作品だった。2022/11/04
星落秋風五丈原
36
2010年のアツリキヤ航空771便の墜落事故で、唯一の生存者は9歳のオランダ人の男の子だった。「この小さな男の子が悲劇から立ち直っていけるのだろうか」という思いにかきたてられたことが、執筆のきっかけだったらしい。思い出すのが、慰霊登山で知られる御巣鷹山の日航ジャンボ機墜落事故だ。あの時も生存者の中に少女がおり、私たちは彼女が選んだ職業まで知っている。事故があまりにも凄惨なものであったため、“奇跡的に生きていた”彼女の物語は広く報じられた。 2022/07/28
けんさん
31
『奇跡の少年が奏でる、とまどいと再生の鎮魂歌』 飛行機事故でただ一人生き残り、両親と兄を失った12歳のエドワード。変貌した環境にとまどい、周りの人達と右往左往しながらも再生の道を歩んでいく。特別な力はなかったけど、これも運命だったのかな…2022/08/09
あずき
13
飛行機事故で唯一生き残ったエドワードの再生の物語。飛行機機内の様子(乗客の思い)と事故後成長していくエドワードの姿・思いを交互に丁寧に綴られていく。タイトルの意味が明かされてからの描写が印象深く、作者の優しい眼差しを感じる余韻。2022/08/08