内容説明
差別の激しい土地に生まれ、同性愛者として長じ、「八歳で作家になった」と豪語したという天才はデビュー前から天才だった。ニューヨーク公共図書館が秘蔵する貴重な未刊行作品を厳選した14篇。ホームレス、老女、淋しい子どもなど、社会の外縁にいる者に共感し、仄暗い祝祭へと昇華させるさまは、作家自身の波乱の生涯を予感させる。明晰な声によって物語を彫琢する手腕の原点を堪能できる選集。(解説・村上春樹)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅう
90
ここに登場する人物たちは、考えてみれば皆異邦人(比喩的、象徴的な意味で)ばかりだ。盗癖のある女生徒、死に魅入られた老婆、1/4黒人の血が流れているだけで退学になる女生徒、勉強が苦手で妄想に走る女生徒。書き出してみると女生徒率、高し。それにしても1/4黒人の血が流れているだけで退学になるだなんて時代はまだまだ人種差別が横行してたんだ。カポーティの10代の頃に書かれた初期短編集。相変わらず文体は美しく、想像力は羽ばたいていた。2025/08/02
ジョゼ★ネコを愛する絵描き(趣味)
83
カポーティは初読でした。 この本は「カポーティ初期短篇集」で、未刊行作品を厳選した14篇。 どれも思春期から青年期に書かれたものだそうですが、その天才ぶりにビックリしました。 噛み締めるようにじっくりと読みました。 仄暗い感じでしたが、ジーンとくるものがあります。 帯にあるように「泣ける」とは何かちょっと違う感じです。 カポーティの事も色々知りたいなと思いました。 「ティファニーで朝食を」や「冷血」も読もうと思います。 そしてまたこの作品を再読したいです。 村上春樹の解説もあって、そちらも良かったです。2023/02/18
やいっち
79
読む前は、表題の「ここから世界が始まる」に訳もなく難解そう、哲学的? と警戒気味だったが、読み出したら、どの習作も年齢に似合わぬ生活感風土感が漂っていて楽しめた。これが高校生ほどの若者が書いたとは思えない。2023/08/14
Vakira
67
超初期短編集。題名の如く、カポーティの妄想世界がここから始まった。名前は知ってましたが、カポーティ初読み。偶々、本屋の新刊文庫棚でこれ発見す。最新刊で初期短編集であればカポーティ知るにはもってこい。なんたってカポーティ10代、それも思春期前位の頃の作品。解説とか帯のコメント読まなければとても10代とは思えないほどこなれています。多分、若年ならあろうはずの無理な展開がないからだと思います。すんなりとオチます。それも様々な視点の主人公。少年、老婆、黒人女給、少女とキャラは多様化。流石、カポーティの人間観察眼。2022/10/22
aika
52
初めて読んだ時から心をとらえて放さないカポーティ。初期作品にもそのエッセンスは凝縮していて、ページを繰る時間は幸福なひとときでした。嫌われものの黒人の老夫人にまつわる記憶を、当時8歳の少年だった語り手が振り返る「ミス・ベル・ランキン」はじめ、私が惹かれ続けている残酷さと紙一重のイノセントが澱のように積もります。子供から大人になる年代の微妙な心の揺れや、社会という大きな枠の中からはみ出すようにして生きる人の哀しさや人情が染み入りました。あなたは、生まれながらにカポーティなのねと、表紙に語りかけたくなります。2023/01/18
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