内容説明
「ドイツ、フランス、そして日本で花開いた精神病理学の遺産を、著者は現代に引き継ごうとしている。入門書でありながら精神病理学の未来を見据えた意欲的な本である。」 ── 木村 敏(京都大学名誉教授)
精神病理学は、ときに難解とか抽象的といったイメージをもたれることがある。けれども本当は、統合失調症、うつ病、認知症、自閉症などの精神障害を「わかりたい」と思う全ての人にとって、大きな助けとなる実践的な営みである。もっとたくさんの人たちに、精神病理学が積み上げてきた叡智を知り、役立ててほしい。本書は、そんな強い思いのもと生まれた入門書である。だれでも読み通すことができるように、次のような工夫が施されている。
・各章を精神障害ごとに分け、冒頭で『DSM-5』対応の最新の基礎知識を概説し、全体の見取り図として学説史などを紹介。
・精神病理学の代表的な考え方――記述精神病理学・現象学的精神病理学・力動精神医学ごとに節を設け、それぞれの主要な学説を網羅。
・かならず症例を提示し、具体的・実践的に解説。
・わからない言葉があれば索引ですぐに確認可能。索引は文中の重要語をひろくカバーし、事典のようにも使える。
このように、精神障害のことをよく知らない読者でも、「自分がいまどこにいるのか」を見失うことなく読み進めていける構成をとり、そして、実践に役立てられるかたちで精神病理学のことが「わかる」記述を徹底した。自信をもって「入門書の決定版」として薦められる、著者渾身の書き下ろし。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
せ~や
70
発達障害やうつ病など、精神病理学の中の、いくつかの精神病の事が書かれてる。でも、「どうしたらいいか?」という解決策が書いているではなく、当人が見ている世界や感じている事、どんな風にそこに棲んでいるか…当人に寄り添った感じで、症例を挙げながら、専門用語も交えつつ、出来るだけ日常的な用語で丁寧に描かれています。読みやすくて、分かりやすくて、面白い。否定もラベリングも簡単だけど、「それはどんな世界で、なぜそんな言動を取ってしまうのか?」と想いを馳せれば、見えてくるものだって変わってくる。発見が沢山の名著!☆52019/05/16
ころこ
38
他人が家に入ってくるからと鍵を変えて補助錠まで付けた人、テレビの音量がやたらと大きい人、天井から毒ガスが巻かれていると訴える人、全裸で客人を迎える人など、思えば精神疾患じゃないかと思い当たる人に会ってきたことを思い出しました。そういう実例があると、本書は興味深く読めます。補完するために、豊富な症例があります。表現は平易なので、人文書というよりはパンフレットに近い印象です。当時、彼らを恐れるのではなく、彼らが何を感じているかを想像していれば、もっと対応が違っていたはずです。統合失調症は「自明性の喪失」、操作2019/07/02
そふぃあ
25
様々な症例をコンパクトにまとめ、専門家も一般人も読んでためになるような一冊。序章を読んだあとは通し読みじゃなく、索引から気になる単語ごとに読んでみるのが楽しく知識を深められる読み方だと思う。メランコリー親和型の部分に関しては思うところがあったので、別の本も参照しながら理解を深めていきたい。2019/07/10
またの名
14
『サラリーマン金太郎』で躁鬱病を説明する等の親しみ易さだけでなく圧倒的な知識量及び現実の臨床経験とその手際良い整理、複数の学説間を行き来する横断性に加え、学説というもの自体の相対化も見モノ。統合失調症における人格の「荒廃」概念の差別性や人工性を指摘し、メランコリー親和型性格を美点として語ってきた国内議論に潜むソフトな国粋主義への批判を取り上げたりと、新しい何かが精神病理学で起きてる状況を感じさせる。意味不明なことで有名なラカンやドゥルーズにも抜群に詳しい著者による哲学からの引用に、いい加減さの気配はない。2018/11/20
Z
8
良書。アメリカ精神医学の診断基準であるdsmによる分類・特徴付けへの批判をし、具体例を付しつつ記述心理学、現象学的心理学、力動的心理学からの視点を加え、病への視点を豊かにしていく。フロイト・ラカンの考えの他に、哲学者の考えがこんな形で精神医学に影響を与えたんだなという視点や、逆に著者が精神医学から哲学者への眼差しを向け返す記述が新鮮であった。 2022/09/05
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