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内容説明
2020年10月12日、アスリートの性的画像問題についての第一報が配信された。共同通信運動部の女性部員ふたりからはじまった一連の調査報道は、JOCや警察を動かし、社会的なうねりを巻き起こしていく。調査報道の舞台裏から、盗撮罪をめぐる法制度整備の動きや盗撮加害者の実態解明まで、これからのスポーツと盗撮の問題を考えるための一冊。
目次
はじめに 鎌田理沙
第一章 アスリート盗撮を世に問う 鎌田理沙
I 勘違いからの出発点
怪しい男性?
「隠し撮り、よくあるんですよ」
コロナ禍の社員寮
焦りから作戦会議
II アスリート委員会から意見書
ネット世界に広がる被害
女性選手二人が被害取りまとめ
III 日本陸連、そしてJOCへ
意見書作成へアクション開始
声を上げた陸上選手
ユニホームに選択肢を
弁護士も全面協力
腰を上げた日本陸連
隠し撮りは「盗撮」か
IV 第一報を全国メディアに配信
国内競技団体の苦悩
赤外線の隠し撮り対策を続けるスポーツメーカー
それぞれの対策とジレンマ
「性的画像」という表現
第二章 ニュースの反響 鎌田理沙
I 一カ月後に共同声明、海外にも動き
山下JOC会長と〝勉強会〟
ドイツの体操選手、ボディースーツで性的画像に抗議
II 日本陸連アスリート委員長の高平慎士さんに聞く
ユニホームの選択肢も必要
規制よりルールを
III 学生陸上にも被害、無観客ライブ配信
IV 声を上げた陸上選手、問題提起の意義
情報発信に不安も
モラルの欠如
感じる変化
情報発信元の開示請求を
V 競技団体アンケート、三割が被害認識
モラルの境界線
事例A チアリーダー 品川絵里
甲子園出場校へアンケート。チアリーダーも盗撮被害に
選抜の現場
第三章 JOCと警察組織 益吉数正
I JOC中心に対外発信、情報提供窓口設置
七団体による声明、ポスター作成
相談から一カ月余り、二次被害リスクも考慮
予想を超える通報、半月で三〇〇件
II 警視庁が協力を申し出
JOC情報を基に全国初の逮捕者
大きな反響「抑止力を高める第一歩」
ネットから撤退の動きも
III 初の立件、全国に波及
名誉毀損で初の摘発
京都府警、異例の摘発
IV JOC籾井常務インタビュー
嫌だって言っていい
競技によって違う被害状況
ネットの怖さ、警察と情報は共有
逮捕、法整備だけがゴールではない
V 東京五輪での取り組み
入場者の禁止行為に明記
東京五輪前後で情報提供が倍増、二五〇〇件に
未来に生かせるか
第四章 盗撮罪をめぐる動き 品川絵里
I 法整備の欠陥
なぜ立法化が必要なのか
「盗撮」を取り締まる法律がない
「撮影の罪」を巡る論点
一九六四年東京五輪を契機にできた東京都の条例
航空業界、塾、芸能界も
II 性犯罪の法改正検討会
ユニフォーム姿は対象から除外
海外の事例
韓国での水泳大会で逮捕例も
III シンポジウムの開催へ
競技者として
メディアとして
指導者として
すべての撮影が悪いわけではない
IV 上谷さくら弁護士インタビュー
罪の意識が低い
盗撮と通常撮影の難しい線引き
被害は日常的
法律は多数決で決まる
取り締まる難しさ
刑が重くなれば抑止力に
事例B サンバ 品川絵里
サンバダンサーも盗撮対象に
第五章 アスリートたちの告白 品川絵里
I 取材を受けてくれるトップ選手が続々と
当初はお断りの返事、その次に
テレビ番組でも特集
II 衝撃的な被害の体験談
Vリーグのトイレ盗撮
III ネットで反響、連載したインタビュー記事
IV 健全に純粋に競技に打ち込める環境を
大山加奈さん再インタビュー
嫌だった「へそ出し」
声を上げるには覚悟必要
背負うことは選手に大きなダメージ
純粋に競技に打ち込める環境に
V 「若い頃にもあった」
小谷実可子さんインタビュー
「見るとショックを受けるから見ないほうがいい」
選手は意見の発信を
東京五輪の撮影禁止ルールを未来につなげる
第六章 加害者の実態 田村崇仁
I 盗撮歴二〇年、元中学教員の告白
「盗撮」検挙件数一〇年間で三倍、スマホが八割
スマホに画像二〇〇〇枚「ゲームに近い感覚」
「人生終わった」と頭真っ白
ガラケー時代から「撮ることがメイン。見返さない」
厳罰化「死刑になってもやる人はいる」
逮捕者は氷山の一角、再犯率約四割
夫婦で取り組む盗撮の再犯防止教育
金儲け型、重症型、軽症型の三タイプ
II 加害者臨床の専門家に聞く
盗撮は「性依存症、ローリスク・ハイリターン」
非接触型の犯罪、女性を「モノ化」
性的画像サイトはビジネスで成立も
無音アプリ、東京五輪でも問題提起
誰でも陥る「依存症」の恐怖
犯罪心理学の専門家、背景は「日本特有の甘え」
盗撮は「病気じゃない」
再犯防止へ「性教育」の見直し必要
III 地下マーケットの闇
陸上や水泳など競技別、チアリーダーも
新体操会場で学生三人組のカメラ没収
若年化する加害者、中学生がLINEで画像共有も
盗撮防止へボランティアで見回り
超小型カメラ普及で巧妙化する手口
盗撮サイトの市場は数百億円規模?
IV 広告収入で稼ぐ盗撮ビジネス
「ターゲット広告」で盗撮警告、京都府警の取り組み
一〇年間で一億円超の稼ぎ
海賊版や児童ポルノと共通する対策課題
デジタル化でネット広告二兆円と急増も背景
対策強化へ国内外の包囲網が必要
デジタルタトゥーの消えない傷
まとめにかえて 田村崇仁
おわりに 品川絵里
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