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内容説明
いまや日本の誰もが知っていて、神格化すらされている俳聖松尾芭蕉。だが、その実像を我々は本当に知っているのだろうか。『悪党芭蕉』『芭蕉という修羅』などの一連の芭蕉評論で、これまでに知られてこなかった芭蕉の姿を描き出した著者が、代表句百句を選りすぐり、タブーとされてきた衆道の側面や隠密としての行動を明らかにしつつ、虚実が分かちがたく絡み合う芭蕉の俳句ならではの魅力を探る。著者一流の独特な視点と軽妙な文体による「超訳」によって松尾芭蕉の実像に迫る。
目次
はじめに──「旅する者」も闘いである
第1章 伊賀の少年は江戸をめざす──春やこし年や行けん小晦日(宗房)
1 春やこし年や行けん小晦日
2 七夕は夕辺の雨に逢ハぬかも
3 紅梅のつぼミやあかいこんぶくろ 兄分に梅をたのむや児桜
4 天〓や京江戸かけて千代の春
5 此梅に牛も初音と鳴つべし
6 猫の妻へついの崩より通ひけり
7 あら何ともなやきのふは過ぎてふくと汁
8 かびたんもつくばゝせけり君が春
9 実や月間口千金の通り町
10 阿蘭陀も花に来にけり馬に鞍
第2章 深川へ隠棲した本当の理由──夜ル竊ニ虫は月下の栗を穿ッ(桃青)
11 夜ル竊ニ虫は月下の栗を穿ッ
12 枯枝に烏のとまりたるや秋の暮
13 櫓の声波ヲうつて傷氷ル夜やなみだ
14 雪の朝獨リ干鮭を囓得タリ
15 藻にすだく白魚やとらば消ぬべき
16 芭蕉野分して盥に雨を聞夜哉
17 氷苦く偃鼠が咽をうるほせり
18 雪の〓左勝水無月の鯉
19 あさがほに我は食くふおとこ哉
20 世にふるもさらに宗祇のやどり哉
21 椹や花なき蝶の世捨て酒
22 馬ぼくぼく我をゑに見る夏野哉
23 野ざらしを心に風のしむ身哉
24 猿をきく人すて子にあきのかぜいかに
25 道のべの木槿は馬にくはれけり
26 馬に寝て残夢月遠しちやのけぶり
27 明ぼのやしら魚しろきこと一寸
28 海くれて鴨の聲ほのかに白し
29 水とりや氷の僧の沓の音
30 辛崎の松は花より朧にて
31 菜畠に花見顔なる雀哉
32 命二ツの中に活たるさくらかな
33 山路来て何やらゆかしすみれ草
34 狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉
35 白げしにはねもぐ蝶の形見哉
第3章 古池とは何か──古池や蛙飛こむ水の音(芭蕉)
36 古池や蛙飛こむ水の音
37 名月や池をめぐりて夜もすがら
38 ものひとつ我がよはかろきひさご哉
39 水寒く寝入かねたるかもめかな
40 初雪や水仙の葉のたはむまで
41 月はやし梢は雨を持ながら
42 寺に寝てまこと顔なる月見哉
43 塒せよわらほす宿の友すゞめ あきをこめたるくねの指杉
44 旅人と我名よばれん初しぐれ
45 星崎の闇を見よやと啼千鳥
第4章 『笈の小文』は禁断の旅である──冬の日や馬上に氷る影法師(芭蕉)
46 冬の日や馬上に氷る影法師
47 鷹一つ見付てうれしいらご崎
48 ふるさとや臍の緒に泣年の暮
49 蓑虫の音を聞に来よ草の庵
50 さまざまの事おもひ出す桜かな
51 よし野にて櫻見せうぞ檜の木笠
52 蛸壺やはかなき夢を夏の月
53 おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな
54 あの中に蒔絵書たし宿の月
55 棧やいのちをからむつたかづら
56 俤や姨ひとり泣月の友
57 吹とばす石はあさまの野分哉
第5章 『ほそ道』紀行を決意する──蛙のからに身を入るる声(芭蕉)
58 草の戸も住替る代ぞひなの家
59 行春や鳥啼魚の目は泪
60 あらたうと青葉若葉の日の光
61 暫時は滝に籠るや夏の初
62 野を横に馬牽むけよほとゝぎす
63 田一枚植てたち去る柳かな
64 風流の初やおくの田植うた
65 早苗とる手もとや昔しのぶ摺
第6章 「あやめふく日」仙台に入る──あやめ草足に結ん草鞋の緒(芭蕉)
66 あやめ草足に結ん草鞋の緒
67 松嶋や鶴に身をかれほとゝぎす
68 夏草や兵どもがゆめの跡
69 五月雨の降のこしてや光堂
70 蚤虱馬の尿する枕もと
71 涼しさを我宿にしてねまる也
72 閑さや岩にしみ入薰の聲
73 五月雨をあつめて早し最上川
74 涼しさやほの三か月の羽黒山
75 雲の峰幾つ崩て月の山
76 暑き日を海にいれたり最上川
77 象潟や雨に西施がねぶの花
第7章 幻視する内面の宇宙──荒海や佐渡によこたふ天河(芭蕉)
78 荒海や佐渡によこたふ天河
79 一家に遊女もねたり萩と月
80 わせの香や分入右は有磯海
81 塚も動け我泣聲は秋の風
82 むざんやな甲の下のきりぎりす
83 石山の石より白し秋の風
84 山中や菊はたおらぬ湯の匂
85 浪の間や小貝にまじる萩の塵
86 蛤のふたみにわかれ行秋ぞ
第8章 こころざしは高くやさしい言葉で──初しぐれ猿も小蓑をほしげ也(芭蕉)
87 初しぐれ猿も小蓑をほしげ也
88 病鳫の夜さむに落て旅ね哉
89 うぐひすの笠おとしたる椿哉
90 行春を近江の人とおしみける
91 先たのむ椎の木も有夏木立
92 うき我をさびしがらせよかんこ鳥
93 鶯や餅に糞する縁の先
94 年々や猿に着せたる猿の面
95 菊の香や奈良には古き仏達
96 此道や行人なしに秋の暮
97 升買て分別かはる月見かな
98 秋の夜を打崩したる咄かな
99 秋深き隣は何をする人ぞ
100 旅に病で夢は枯野をかけ廻る
あとがき──「軽み」俳句をめざして
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Masakazu Fujino
マカロニ マカロン
アメヲトコ
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kana0202