内容説明
かつてミラノに、懐かしくも奇妙な一軒の本屋があった。そこに出入りするのもまた、懐かしくも奇妙な人びとだった。女流文学賞受賞の筆者が流麗に描くイタリアの人と町。(解説・松山巖)
※この電子書籍は1995年11月に刊行された文春文庫を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
517
イタリア関連エッセイといえばわたしには内田洋子さんが馴染みだが、須賀さんは内田さんのひとつふたつ上の世代の方だったようだ。あの時代にイタリアへ留学、という経歴が語るように、当時の「お嬢様」。そんな彼女がミラノでの書店(サロン的な)で知り合った人々との交流。60年代といえばイタリアにも吹き荒れた左傾化、宗教も絡んできて、当時の彼の地の上流社会の風景も興味深い。人物描写が上手な作家さんだと思う。彼女をとりまくひとびとへの優しい目線がいい。2025/03/26
ケイ
154
作者のミラノ在住時代、公的にも私的にも、 というか彼女の生活であったコルシア書店に関わる人達の話がつらつらと書き連ねられている。書店のパトロンヌであったツィア・テレーサ夫人(入口のそばの椅子)がとても魅力的。得体がしれないが惹かれてしまうミケーレ(大通りの夢芝居)、ドイツ人と結婚したニコレッタの親離れの出来なさ(家族)、関係する女性が魅力的なガブリエーレ(女友だち)が、特に印象に残る。ほぼ各話でその死に触れられるのに、その多くは語られない死別した夫の事が、喪失感の果てなさを思わせた。2018/09/04
rico
119
慣れないイタリア風の名前がひっかかりなかなか読み進められなかったのに、気が付いたら夢中でページを繰っていた。1950年代のミラノ。カトリック左派の活動拠点、開放区であったコルシア書店。アジアの果ての国からそこに飛び込んだ須賀さんが綴る「仲間たち」との日々。何故だろう、半世紀以上前の異国の人たちが、とても近しく感じられる。でも例えば、ユダヤ人の血をひく少女とドイツ人との結婚の経緯は、先の大戦の傷がまだむ生々しい時代であったことを突き付ける。穏やかにほほ笑む須賀さんの写真。この人が見た世界、もっと知りたい。2020/05/04
ヴェネツィア
119
1950年代から70年代にかけて、ミラノの現代文学や思想の最先端の人々と共に過ごしていた須賀敦子の回想。『ミラノ霧の風景』でもそうだが、彼女のエッセイは時に暗く沈鬱でさえあるのだが、街の描写も人との交流も限りない深みと静謐感とを感じさせる。ここにあるのは、音のしない静かで思索的なイタリアだ。2012/03/16
Lara
100
昭和4年生まれの須賀敦子氏。昭和33年~46年(29才~42才)まで、13年間過ごしたしたイタリアでのエッセイ集。62才になられてからの著作。過ぎた青春時代を懐かしむかのようだが、時間軸は当時の滞在時にある。コルシア書店を中心にその周辺の仲間たちとの触れあいが、今時とは違う。情景が不思議と心に浮かんで来る。個性的な面々が、皆一生けん命に生きている。2022/07/13
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